仕事や勉強のやる気が起きず、モチベーションが下がっているような状態は、誰しも経験があるでしょう。ある行動をした結果得られる報酬(ご褒美)が大きいと期待されるときに、やる気は上がります。何が〝報酬〟となるかは人それぞれだと思いますが、通常はできるだけ努力せずに、ご褒美だけをもらえるほうがうれしいものです。
 努力を要する行動において、人間はその「メリット」と「デメリット」を脳内で計算しています。つまり、私たちが何かを「やろう」と決めたときは、「やる」ことのメリットが「やらない」ことのメリットを上回っている状態であるといえます。

 一方、報酬を得るのに必要となる労力や時間などのコストが大きい場合は、やる気がだだ下がりします。面倒くさい、というやつです。

 このような、ご褒美を予測してモチベーションを高める仕組みには、脳内の神経伝達物質のひとつであるドーパミンの関与が知られています。放出されたドーパミンを受け取ることで報酬とコストの予測の情報が伝わり、そのバランスで意欲の制御を行っていると考えられています。
 ご褒美の大きさでやる気が出る状態と、コストを計算して大変だけど頑張ってみようと思う状態の調節のメカニズム、気になりますね。

■「大変だけど頑張ってみよう」を決める脳の仕組み

量子科学技術研究開発機構の研究者たちの研究によると、その謎を解くカギは、ドーパミンの受け手(受容体)にあることが明らかになりました。


■「できる」と「できない」の間にあるもの

 アメリカのエモリー大学の研究者らは、被験者に、「何の努力もせずに1ドル」か「何らかの努力をすれば最大5.73ドル」がもらえるという、不確実な情報に基づいて努力するかどうかを意思決定させ、その際の脳活動を機能的MRIで計測しました。

過去の試行履歴に基づいて、努力に見合うほどの報酬を得られなかったことの計算に関与することも明らかにしました。
 これらの結果は、不確実な情報が与えられた際には、メリットに基づいた計算を行うことで、努力するかどうか判断していることを示しています。

 うつ病や発達障害などの精神疾患の患者では、〝できる〟と〝できない〟の間に、「できるけど疲れる、面倒くさい」ことが多くあるといいます。この研究の結果は、ヒトが「大変だけど頑張ろう」という気持ちを理解するうえで、重要な手がかりとなることが期待されます。

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