テスラを超えた中国50万円EV、日本の技術者が開発に関与か
2022.04.25 日経クロステック

中国で大ヒットを記録している50万円の電気自動車(EV)、「宏光MINI EV」(上汽通用五菱汽車)。
名古屋大学は、同車の三相インバーターを分解・調査した。判明したのは、部品の統合化やメリハリ設計によって、極限までコストをそぎ落とす見事な設計力だった。
日本人エンジニアが開発をサポートしたとみられる。内部設計や部品を詳細にレポートする。

中国・上汽通用五菱汽車が2020年7月に約50万円で販売開始し、ベストセラーとなっている4人乗り電気自動車(EV)の「宏光MINI EV」。
販売価格もさることながら、搭載されているモーター駆動用の三相インバーターも、名古屋大学の分析によれば原価が1万6000円と非常に安い。
これだけ低価格だと、いい加減な部品を使っていたり、構造が粗悪だったりと、いわゆる「安かろう悪かろう」ではないかと想像してしまう。
しかし蓋を開けてみると、この予想は裏切られ、入念に考え込まれたインバーターの設計思想が明らかになった。

■EVでは破格の50万円以下で販売
宏光MINI EVの外観。中国・上汽通用五菱汽車のEVで、下位グレードの価格が50万円を切る。
2020年に米Teslaのセダン型EV「モデル3」の販売台数を上回ったことでも注目を集めた。

この三相インバーターで目を引いた点は大きく2つある。コスト抑制のための独創的な設計と、基幹部品に限り信頼性の高い部品を採用して
他の部品は安価な民生品を使用するメリハリ設計だ。つまり、ただやみくもにコストを削減したのではなく、構造や部品に細やかに気を配って、
信頼性の確保と低コスト化の両立を突き詰めていた。
こういった高度な製品化を達成した陰には、日本人エンジニアの支えもあるようだ。インバーター内の基板上に「検」の文字が見つかった。
基板の量産工程におけるこうした押印の風習は、日本国内でのみ浸透している。加えて、詳細は述べないが回路構成などにも日本のメーカーの癖があった。
つまり、かつて日本で車載インバーターの設計に携わっていたエンジニアが中国へ渡り、このインバーターの量産工程をサポートしているという推測が成り立つ。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02028/00001/