ビタミンCは風邪を予防しない ノーベル賞学者が与えた影響の罪深さ
大脇幸志郎
2021/11/2 7:00

ところが、ビタミンCに風邪を予防する効果はありません。2012年に過去のすべての研究データをまとめてビタミンCの効果が解析され(*)、全体として風邪予防の効果はなかったとされています。

 ただし、こういう解析ができるくらいに、一時は正当な医学としてビタミンCの効果が期待され、実際に試されていたわけです。

 ビタミンCの健康効果はいまでもよく話題になりますが、ビタミンCの欠乏症である壊血病はきわめて限られた状況でしか発症しません。厚生労働省が発行している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、壊血病防止のためには1日10ミリグラムほどのビタミンCがあれば十分なのですが、日本人は平均してこの10倍近くのビタミンCを食事から摂取しています。おそらくビタミンCが不足している人は皆無に近いのです。

 それでもビタミンCが体にいいというイメージができた背景には、ノーベル賞を2回受賞したライナス・ポーリングという化学者が関わっています。

 ポーリングは1970年の本「ビタミンCと風邪」ほか多数の本や論文を通じて、大量のビタミンCが放射線障害やがん、ストレスなどさまざまな問題に効くと主張しました。

 当然そんな効果はなかったのですが、ノーベル賞受賞者の熱心な呼びかけには大きな影響力があったようです。


全文 🍊🍊
https://www.asahi.com/sp/articles/ASPBW5DCMPBWULBJ007.html