Jリーグが来季から事実上のホームタウン制度撤廃を検討していることが16日、明らかになった。既に議論を重ねており、早ければ今月の理事会で正式決定する。創設当初からの理念撤廃となれば、地方クラブが首都圏の巨大スタジアムでホーム試合を開催し、都市部に下部組織をつくることもできるようになる。また、クラブ名にネーミングライツを認めることも検討中。開幕から30年を前に、Jは大きな変革期を迎えている。

1993年の開幕時から、地域密着やチーム名からの企業名排除などを基本理念としてきたJリーグが、大きく方向転換することになりそうだ。理事会では賛否両論の激しい議論が行われてきたが、早ければ今月にも地域密着の基本理念撤廃が決まる見通しとなった。

従来のホームタウン制度が撤廃されれば、各クラブは全国どこでも下部組織をつくり、有望選手を確保できるようになる。また、全国各地でより自由に主催試合を開催することができるため、例えばイニエスタ擁する神戸の主催試合が、全国の巨大スタジアムでより多く観戦できる可能性も出てくる。収容人員を考えれば、興行規模は飛躍的に高まる。

従来からの地域密着は地域の活性化につながり、初期のリーグ繁栄の要因とされてきた。Jリーグに倣うようにバスケットや卓球、さらに来年1月始動のラグビー新リーグも、地域密着が基本理念。だが本家のJはクラブ数が全国57に増え、最近はIT関連企業など新業種も経営に参画。全国展開を積極的に求めるクラブも出て、ホームタウンに対する考え方も変わってきた。

さらに、最近になって「1クラブがホームタウン内で他クラブの活動を制限することは、独占禁止法に抵触する」という判断が出されたことも変革を後押しした。当初は従来のホームタウン制度にこだわってきたリーグ側も「ホームタウン」という表現を残しながら、旧来の概念を撤廃する方向に変わっていった。

さらに数年後にはクラブ名にネーミングライツを認めることも検討を開始した。Jリーグ開幕直後、クラブに企業名をつけることの是非で読売新聞の渡辺恒雄社長と川淵三郎チェアマン(ともに当時)による論争が起きたのは有名。こちらも「チーム名から企業名を外す」という基本理念を捨てることになる。Jリーグは来季、開幕30周年。旧来の理念を変えながら、リーグ発展の未来へ、大きく舵(かじ)を切ることになる。

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