パワハラ防止を義務付け 離席とがめる「リモハラ」も

Q パワハラ防止法でこれまでと何が変わったのでしょうか。

まずパワハラを、防止法では(1)職場の優越的な関係を背景に(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより(3)労働者の就業環境を害する行為――と定義付けました。これまではパワハラと厳しい指導との線引きが、必ずしも明確ではありませんでした。パワハラ防止法が制定される前から、パワハラをした人には損害賠償責任があり、会社も原則として連帯責任を負うこととされていました。防止法では会社にパワハラを事前に防止する義務が課せられました。

パワハラの相談、調査に応じることを課したほか、被害を相談した労働者への不利益な取り扱いを禁じました。パワハラ防止法が6月の施行と同時に適用されたのは大企業だけで、中小企業は2022年4月から適用になります。

Q 「カスハラ」とか「リモハラ」とかも話題になっているようです。

教員が学生に威圧的な言動を取るアカデミックハラスメント(アカハラ)、スポーツ界や家庭で話題になる精神的攻撃であるモラルハラスメント(モラハラ)も、先輩後輩や夫婦間の上下関係が基礎になると考えられます。

職場でのハラスメントは社員同士で起きるとは限りません。雇用関係のないフリーランスや就職活動中の学生に、社員がハラスメントを働く可能性もあります。連合の調べでは、20代女性の12.5%、30代女性の15.5%が、就活中にセクハラを受けたことがあると答えました。コロナ禍により、フリーランスや就活学生の立場はより厳しくなっています。

最近、話題になっているのが店員が消費者からクレームや無理難題を突きつけられるカスタマーハラスメント(カスハラ)です。日本では「お客様第一主義」が強く、それにつけ込む人間が増えた背景がありそうです。昨今は、メールなどでの呼びかけや指示に素早く反応しない部下に上司が厳しい言動をとる「リモートワークハラスメント(リモハラ)」が起きているとの指摘もあります。コロナ禍で人々のストレスが高まり、弱い人への抑圧につながりかねない面はあるでしょう。

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