防衛省は2017年度に国産空対艦ミサイル「ASM3」の開発を完了した。空自のF2戦闘機に搭載し、従来型の国産空対艦ミサイルの約3倍のマッハ3程度の超音速で飛行できる。
敵に対処する時間を与えず、迎撃されにくいが、射程は百数十〜約200キロ・メートルにとどまるとされる。

新型ミサイルは、ASM3の燃料を増やすなどの改良を加え、400キロ・メートル以上の射程を想定する。
念頭にあるのは、中国海軍の艦艇に搭載された対空ミサイルの性能向上だ。2000年代には、射程150キロ・メートルとされるミサイルを搭載した「中国版イージス艦」と呼ばれる高性能艦が登場した。
13〜18年だけで15隻以上就役したとされ、さらに増える見通しだ。

10年度に本格開発が始まったASM3は、「敵基地攻撃能力につながるという見方への政治的配慮」(防衛省幹部)から、射程が従来型と同程度に抑えられた。
しかし、中国軍のミサイルに効果的に対応するには、その倍程度の射程のミサイルが必要とされる。

開発が終わっているASM3は、射程の短さから防衛省内でも実用性が疑問視され、18、19年度予算案では調達が見送られた。
同省は新型ミサイルの開発費について、早ければ20年度予算に計上する方針だ。

防衛省が国産初となる空対艦の長距離巡航ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル)の開発に乗り出すのは、政治的な配慮でミサイルの射程を抑制する考え方が限界に来たためだ。
日本では長い間、「他国への脅威」との批判を避けるため、長射程ミサイルの保有を避けてきた。
政府は2004年、中期防衛力整備計画(中期防)の策定で射程300キロ・メートル以下の地対地ミサイルの研究開発方針を示したが、与党の一部からの反対で断念した。
しかし、17年には射程900キロ・メートルの米国製空対地ミサイルの導入が決まった。中国の軍拡が日本にとって脅威と映ったからだ。

憲法9条に基づく自衛隊の防御的な任務に照らしても、長射程ミサイルの必要性は自明になった。完成時に時代遅れとなった空対艦ミサイル「ASM3」の改良は妥当な判断と言える。(政治部 上村健太)
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20190317-OYT1T50060/