ファーウェイの大卒初任給40万円 世界標準ではまだチープ

2017年の新卒の初任給は、厚生労働省の発表によると院卒者が23万3400円、大卒が20万6100円だ。
経営コンサルタントの大前研一氏は、この金額はまだまだ世界に大きく遅れをとっているとみている。
スマートフォンなどでお馴染みの中国のファーウェイ(華為技術)を例にとり、グローバルスタンダードな
給料について解説する。

以前「70代よりも出不精な20代」の問題を取り上げたが、家に引きこもる内向きな若者の増殖は、今の日本の
凋落を象徴していると言えるだろう。

すでに述べてきたように、日本は給料がほぼ20年間にわたって下がり続け、初任給は平均20万円ほどのまま
である。時価総額10億ドル=約1000億円の「ユニコーン企業」も、世界217社のうち日本企業はわずかに
メルカリ1社だけというお寒い状況で、国民の心理は冷え込む一方だ。これを反転させるのは非常に難しい。

だが、光明はある。昨年秋に中国の通信機器大手ファーウェイが日本で大学卒のエンジニアを「初任給40万円」で
募集して大きな話題になったことだ。日経産業新聞(2017年11月15日付)によれば、この金額について
ファーウェイ・ジャパンの広報は「欧米企業にやっと肩を並べたレベルで、珍しくはない。優秀な人を採るための
グローバルスタンダードです」とコメントしたという。

一方、ソニーやパナソニックなど日本企業の大学卒の初任給は21万円台にとどまっている。それに比べると、
ファーウェイの給料は2倍近く高いわけだが、グローバルスタンダードから見れば「初任給40万円」も、まだまだチープだ。

世界の一流のIT企業やコンサルティング会社の初任給は年収1200万〜1500万円である。人手不足が深刻化している
アメリカのシリコンバレーやサンフランシスコ・ベイエリアなどでは、中堅エンジニアは3000万〜5000万円で他社に
引き抜かれる。プロジェクトマネジメントもできる人材なら1億円前後、AI(人工知能)やディープラーニング(深層学習)
などの研究者には10億円以上の値札が付くことも珍しくない。

だから優秀なエンジニアを引き抜かれないようにするために、給料がどんどん上がっていくのである。そうした
“世界標準”に比べるとファーウェイの「初任給40万円」はいかにも見劣りする。

(略)

実は、私は20年以上前に深センのファーウェイ本社を訪れたことがある。その時に瞠目したのは、全社員のうち
エンジニアが約8割もいたことだ。しかも、会社の隣にアメリカ風の立派な一戸建てをたくさん作り、将来有望な
エンジニアの社宅にして厚遇していた。

それを見て私はいち早く「もし、中国から世界化する会社が登場するとしたら、第一号はファーウェイだろう」と
予言した。その当時からファーウェイはグローバル企業になる基礎条件を備えていたのである。

http://www.news-postseven.com/archives/20180107_641068.html