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その凄腕ミュージシャン

沼澤尚(音楽プロデューサー、ドラマー)
僕が多分出会ったアーティストの中で最も衝撃だった人。
まぁこの子にはね、ちょっと驚きました。
とにかくね、22か3になったばっかりなんですよ。
自分がその大学3年生・4年生の頃に、ここまでなんか自分のやりたい事がはっきりしてて、感覚がこれだけ鋭い人、なんていうのは周りは絶対いなかったし。
例えば、「ここはこういう風にしていきたい」とか、「ここはこういう風にした方が、よりこのように聴こえる」ていう事を自分ではっきり言える人なんですよね。
それに、その上彼女が素晴らしいのが、年齢とか性別に関係なく、その自分が、リスペクトをしているという姿勢を非常にさりげなく、一緒にいるミュージシャンにね、そういう印象を与える人でしたね。


森俊之(音楽プロデューサー、キーボーディスト)
あのプロデュース能力はもうホントすごいですよ。セルフ・プロデュースなんだけど、周りを上手く巻き込む何かがあるんです。で、その中心に彼女がいて……
あの、現場では矛盾したことを言ったりっていうこともあるんですけど(笑)、でも、カリスマ性みたいなもの、吸引力みたいなものに引き寄せられて、ついつい、100パーセント、120パーセントっていう感じになっちゃうんですよ。


亀田誠治(音楽プロデューサー、ベーシスト)
林檎さんとの出会いは97年の夏。本人にお会いする一週間ぐらい前に音源を聴かせていただいたんですけど、これがブッとんだんですよ。
僕は2枚のアルバム(『無罪モラトリアム』『勝訴ストリップ』)をいっしょに作ったんですけど、そこに入ってるほとんどの曲は、本人の弾き語りや打ち込み、もしくはアマチュア時代にやっていたバンドのライヴ音源で、30曲以上入っていました。
で、実際にお会いすることになったんですけど、林檎さんはその当時から自分の考えをイメージではなく的確な言葉で、音楽の用語で伝えられる方でした。
さらに、ピアノもギターも弾けて、ドラムも叩けるっていう感じで、どの楽器をやってもちゃんと“表現者”としてのレベルで演奏できた、根っからのミュージシャンだったんですよ。
よく、アーティストの“吸引力”とか“求心力”っていうことを言いますけど、林檎さんのまわりにはなにかしらのエネルギーが渦巻いて
林檎さんのまわりにいると、僕も含め、デザイナーの方やスタイリストの方、プロモーション・ビデオの監督さんなど、みんないっしょに渦の中に入っていって、いままでできなかったことができちゃうっていう。
だから、僕らはぜんぜん迷うことがなかったんです。
「歌舞伎町の女王」を出したとき、「ここでキスして。」を次のシングルとして出すことも決めていたし、『無罪モラトリアム』はもちろん、『勝訴ストリップ』までのヴィジョンが見えていたわけですからね。