先週末の動員ランキングは、先週2位でスタートを切った『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』が、土日2日間で動員12万5000人、興収1億5400万円をあげて1位に。動員ランキングでは2位にランクダウンした前週1位の『エターナルズ』だが、興収は『すみっコぐらし』と横並びの1億5400万円。これは『すみっコぐらし』が健闘しているとも言えるわけだが、例年の同時期と比較するとかなり低水準の数字での争いであることから、『エターナルズ』の不甲斐なさがもたらした結果とも言えるだろう。

 もっとも、『エターナルズ』の世界興行は現在のところ好調で、アメリカ国内では『ブラック・ウィドウ』や『シャン・チー/テン・リングスの伝説』を下回るオープニング成績だったものの、韓国やイギリスやメキシコなどのマーケットでは今年最大級のヒットとなっていて、世界興収トータルでは『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』に次ぐ今年ナンバー2の成績を記録している。また、自国の役者(韓国のマ・ドンソクやメキシコのサルマ・ハエック)が主要キャラクターとして活躍したり、役者陣や物語設定(ジェンマ・チャンとキット・ハリントンは揃ってロンドン出身で、劇中でも現代のロンドンで生活している)と所縁が深かったりする国では、如実にその効果が表れている。10年後くらいには、MCU作品で日本人俳優が主要キャラクターを演じたり、東京にヴィランが出現したりする日もやってくるのだろうか。

 ちなみに日本での『エターナルズ』の先週末までの累計興収は7億7944万7880円。人口半分以下の韓国では同期間の興収が約220万ドル(約25億円)と報告されている(https://deadline.com/2021/11/eternals-no-time-to-die-milestone-dune-venom-jungle-cruise-china-global-international-box-office-1234873775/)ので、ちょうど韓国の3分の1の大きさのマーケットということになる。とはいえ、数年前までのマーベル作品興行はさらに激しい差があったので、ポップカルチャー後進国日本もそれなりにがんばってはいるのだ。

 しかし、そんな健気にがんばってる日本の映画ファンや映画館に思いっきり水を指すのが、前回の当コラム(https://realsound.jp/movie/2021/11/post-906141.html)でも取り上げた「遅い日本公開」問題だ。ソニー配給の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の公開が世界主要国から3週間遅れとなるニュースに続いて、今週、スティーヴン・スピルバーグ監督『ウエスト・サイド・ストーリー』が9週間(日本公開2月11日)、ケネス・ブラナー監督作『ナイル殺人事件』が2週間(日本公開2月25日)、ギレルモ・デル・トロ監督作『ナイトメア・アリー』が実に14週間(日本公開3月25日)、北米公開から遅れての公開となることが発表された。いずれも既に日本公開日がとっくに発表済、さらにコロナウイルスの状況も昨年春の感染拡大以来最も落ち着いてきているこのタイミングにもかかわらずだ。あまり想像はしたくない未来だが、来年の2月頃にまた次の感染の波がやってきたら一体どうしてくれるつもりなのだろうか?

 『ウエスト・サイド・ストーリー』も『ナイル殺人事件』も『ナイトメア・アリー』も配給はディズニーだが、旧20世紀フォックス、現20世紀スタジオ作品。ディズニー・ジャパンは、20世紀スタジオを傘下に収めて以降、20世紀スタジオ関連作品では劇場パンフレットを制作していないなど(『エターナルズ』のようなディズニー純正作品は作られている)、自社コンテンツの扱いにおいて明らかな格差が生じている。コロナ以降、映画業界の中では「洋画不況」という言葉が以前にも増して囁かれるようになっているが、それを加速させるようなことは誰も望んでいないはずだ。

リアルサウンド 11/18(木) 23:09
https://news.yahoo.co.jp/articles/e19cf472110bf688cd30c2edafdd3086541dc4b6 

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