2021年11月4日 14時06分

「そうだと思ってな、一升瓶を2本買ってきた」
「若旦那様は縁起がいいなあ」
「そんなに縁起がいいか」
「はは、だって一升瓶を2本。2本買った、日本勝った!」

「2本」と「日本」をかける笑えないオチ。

じつはこれ戦意高揚のために作られていた国策落語の一部です。戦後、誰も語り継ぐことなくひっそりと消えていきました。

しかし、戦後76年がたった今の時代、戦争のない平和な日本に国策落語をあえて復活させた落語家がいます。林家三平さんです。

人を笑わせる落語家がなぜ笑えない落語を披露し続けているのか、その胸のうちを今回明かしてくれました。
(ラジオセンター 瀬古久美子 坂本和輝)





国策落語って何?

国策落語は、三代目三遊亭金馬や三平さんの祖父でもある七代目林家正蔵など、当時の人気落語家によって戦意高揚のために作られました。

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三平さんの祖父 七代目林家正蔵

出征を名誉としてたたえたり、軍事費確保のために国民に貯蓄や債券購入を勧めたりする内容で、当時発売されていたレコードや雑誌で確認することができます。

演芸史研究家の柏木新さんによると、昭和15年から盛んに作られるようになり、現在およそ140の演目が確認されています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211104/K10013321981_2110281605_2110302252_01_04.jpg
国策落語の資料

柏木さんにお借りして今回実際にレコードをきいてみました。

柳家金語楼の「献金長屋」では、出囃子の代わりに勇壮な軍歌が流れたあと、はなしが始まります。


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「表を歩いてみな、えー、飛行機献納とか戦車、機関銃の献金が盛んじゃねえか。何か1つ献金するか献納しようと思うが、そんなみんな気持ちはねえか」
"

「戦車」「機関銃」といった落語とは思えないことばが次々と出てきて正直つまらないのですが、当時のスターが披露しているだけあって、思わず聞き入ってしまいます。




祖父の国策落語「出征祝」

三平さんは、6年前、祖父の七代目林家正蔵の名前で発表された「出征祝」というはなしが掲載された本の存在を知りました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211104/K10013321981_2110271411_2110272028_01_03.jpg

林家三平さん
「最初は祖父がやっていたということで当時どんな気持ちだったのかな、よし自分もやってみようと思い立ったんです。ところがものすごく怖い内容だった。祖父がこういうことをやっていたんだと総毛立つような思いでした」

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出征祝が掲載された当時の本

出征祝はある店の若旦那に召集令状が届き、父親である大旦那や周りの人たちがどのような思いで送り出すのかといったはなしです。

NHKでは、ことし9月、ラジオで初めて三平さんに出征祝を披露してもらいました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211104/K10013321981_2110271412_2110272028_01_07.jpg
収録中の三平さん


     ===== 後略 =====
全文は下記URLで

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211104/k10013321981000.html