あこがれの職業である女子アナの出身大学を調べてみると、やはり強いのが早稲田、慶應、上智など、東京の有名私立大学。NHKと民放キー局のアナウンサーは、圧倒的に私大文系卒が多いが、元フジテレビの武田祐子アナは山形大理学部卒という異色の学歴の持ち主だ。女子アナ界“超マイナー校”ゆえの苦労を聞いた。

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 山形で生まれ、山形大学理学部を卒業するまでずっと山形で育ちました。小学生の時に先生から「君の声はよく通るからアナウンサーになるといい」と誉められたことはありましたが、本当になれるとも思わず、生涯を山形で暮らす予定でした。

 そんな大学時代、「べにばな国体」の観光物産PRのアルバイトを経験して、表現すること、伝えることの喜びを知り、アナウンサーになりたいと思ったのです。でも、地方の理系という環境では、周りにマスコミ志望の友達は皆無で、OB・OGもいない。

 しかも大学4年生になる時、山形県内でフジ系列の番組が放送されなくなってしまい(*)、番組を見られない状況でフジテレビの面接を受けました。他にもTBSやテレビ朝日などを受けて、試験のたびに片道3時間程かけて新幹線で上京していました。

【*フジ系列だった山形テレビ(YTS)がテレビ朝日系列にネットチェンジ。1997年4月のさくらんぼテレビ開局までフジ系列番組の放送がなかった】

 フジテレビの面接は4〜5回だったと記憶していますが、面接官の方はエントリーシートに書いた「山形大学理学部生物学科」の学歴に興味を持ってくださることが多かったようです。

 ただ、方言には苦労しました。例えば、山形弁では「雨」と「飴」の発音の区別がなく、共通語の感覚だと「飴が降る」に聞こえてしまう。アナウンス室で毎日のようにアクセントを指導されました。

 実家に電話した翌日は山形弁が出るらしく、よく「昨日実家に電話したでしょ?」と言われました。実家や山形の友人に電話するのもはばかられ、心細かったですね。他にも山形弁だと知らずに「ぼっこ(鉛筆の先が丸くなること)になってる」と言ったら、アナウンス室内で「ぼっこ」が流行語になったことも良い思い出です(笑い)。

私が入社した後も、山形ではフジ系列が映らないままだったので、VHSに録画して両親に送っていました。『笑っていいとも!』の「テレフォンショッキング」や『スーパータイム』の天気予報など短いコーナーだったので、録画がVHS1本分溜まるまで随分と時間がかかりました。

 今の就職試験では学歴を伏せて面接したりしますが、私はむしろ、肩書きで得した部分があったのかもしれません。地方の方も、アナウンサーを目指す人は諦めず挑戦してほしいです。

【プロフィール】
武田祐子(たけだ・ゆうこ)/1970年、山形県生まれ。フジ時代は『笑っていいとも!』『FNNスーパーニュース』などを担当。2017年にフリーとなり、現在は地元放送局でも活躍。レギュラー番組ナレーションに『もしもツアーズ』など。

Newsポストセブン
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2020.11.23 07:00  週刊ポスト