巨人が後半戦初の広島戦で3連敗した。これで広島は首位・巨人とのゲーム差を1ケタの「9」に戻して中日と並ぶ同率3位に上がったが、この3連戦は勝敗より、日本の野球のありかたについて大きな教訓を残した。

1、2戦とも終盤で逆転したカープは、第3戦では3つのバントを成功させ、延長10回でサヨナラ勝ちした。
最終回、先頭で歩いた田中広を西川がバントで送り、菊池涼の中前ヒットなどで1死満塁としたあと、鈴木の右前ヒットで試合を決めた。

一方、巨人は3連戦を通してバントを失敗し、1死一塁や一、二塁のチャンスに凡打でチャンスをつぶした。
これでは春眠を続けていたカープも目をさますはずである。

小技で相手投手にプレッシャーをかけるのが日本野球
私はこれまでも、巨人で一番バッティングがいい坂本勇と丸を2、3番に置く打順には反対してきた。
これはクリンナップを1人繰り上げただけだが、立ち上がりから大量点を取りにいく欲張り戦術は、日本野球の本質を無視している。

選球眼がよく、バントなどの小技ができる選手を1、2番に置いて相手投手にプレッシャーをかけ、3番以下のクリンナップで掃除(得点)するのが本来の日本の野球だ。

ところが巨人は楽に点を取るため、丸をはじめ昨年のゲレーロなど、大金と巨人のブランド力で毎年のように他チームやアメリカから選手を集めて、4番バッターがそろった“オールスター打線”を組んでいる。

これでは監督も楽なものだが、好不調の波があるバッティングは水物だ。打てないときや1点勝負では、出塁した走者をバントで送って相手にプレッシャーをかける作戦が必要になる。

だが、相手投手から見れば、巨人には「クリンナップの前にバントで走者を二塁や三塁に進められてしまう」というプレッシャーがない。

DeNA、ヤクルトも……伝染する「2番・強打者論」
この「2番・強打者論」は米大リーグで生まれた。典型は「2番・トラウト、3番・大谷」のエンゼルスだが、現在ア・リーグ東地区首位のヤンキースも、大砲ジャッジを2番に据えている。
トラウトは12年契約、総額約473億円の大リーグ史上最高給で7月25日現在、打率.296、ホームランはア・リーグトップの33本。一方、ジャッジも2年前に52本塁打を放ったホームラン王だ。

原巨人はいち早くこれを取り入れたが、私が心配なのは、この最新オーダーが他チームにも伝染し始めたことだ。

後半戦に入ってからはDeNAの主砲・筒香が2番に入り、最下位を独走中のヤクルトも、春から3番だった山田哲が交流戦後からは1番や2番を打っている。
「アメリカ生まれ・巨人育ち」の新戦略が日本でも流行すれば、1、2番の大事な役目が忘れられ、主砲が1、2番に転勤するクリンナップ軽視の風潮が広がる。これでは日本の野球はダメになる。

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幻冬舎plus2019年07月27日 08:02