◆ Vチューバ―起用したい企業の思惑と、「オタク市場」の絶対的な強さ

 3DのCGキャラクターがインターネット上で活動する「Vチューバ―」(バーチャルユーチューバー)。2017年ごろからじわじわと認知され始め、テレビのバラエティ番組や報道番組もこぞって取り上げるようになった。最近も『マツコ会議』(毎週土曜夜11時、日本テレビ系)にVチューバ―が登場。マツコ・デラックスと”中の人”が共演して話題を呼んだ。

 そんなVチューバ―の人気にあやかり、タイアップ広告を企画したり、自社開発してプロモーションに活用したりする企業も多い。サントリーやロート製薬、DMMなどの大企業のほか、自治体では茨城県が「茨ひより」なるVチューバ―を公認マスコットに抜擢して注目を集めた。Vチューバ―の育成を対象とするコンサルティング事業も立ち上がるなど、いよいよ目が離せない存在になってきている。

■ 続々参入する大企業

根羽清ココロちゃん(ロート製薬公式ホームページより)
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 『根羽清(ねばせい)ココロ』。彼女は、目薬でおなじみのロート製薬で働く研究員。アイドル顔負けのルックスとスタイルを誇る美少女だが、リアルの人物ではない。「スキンケア製品開発兼広報・CSV推進部」に所属するロート製薬公認のVチューバ―だ。ユーチューバー活動はあくまで副業という”設定”。自己紹介の動画で、「ロート製薬は副業OKの開かれた大企業」であることをさりげなくアピールしている。

 メーカーのサントリーもVチューバ―動画を配信して自社製品をPRする。世界のどこかにある「水の国」からやってきた謎の美少女『燦鳥(さんとり)ノム』は、年齢120歳(サントリーと同じく1899年誕生)、趣味は短歌で特技は歌うこと。好きなものはもちろん、飲み物。共感を誘うようなキャラクター設定と独特の世界観が人気を集め、配信をはじめてから半年でチャンネル登録数は7万を超えたという。

 大企業の広告塔といえば、アイドルや俳優などの芸能人が主流だ。タレント頼みのイメージアップ戦略と一線を画すVチューバ―のメリットといえば、コストパフォーマンスの良さや自由度の高さ、流行りすたりに左右されないところといえるだろう。

 企業がタレントを起用する場合、出演料や製作費、衣装費用やメイク費用など多大なコストがかかる。自社で抱えるVチューバ―なら、それらの大幅カットも可能。そのうえ、失言や不祥事などで人気が失墜するリスクもない。タレントよりも影響力や発信力で劣る反面、ローリスクローリターンの手堅い働きが期待できるイメージキャラクターたちだ。

 Vチューバ―関連のビジネスも広がっている。ゲーム会社のグリーは、Vチューバ―の動画コンテンツ制作や配信を行うプロダクション会社「Wright Flyer Live Entertainment」を設立。100億円を投資してVチューバ―配信のアプリ開発や企業向けのコンサルティング事業を開始した。経営コンサルタントの松江英夫氏は、以前出演した『プライムニュース』の中で、アニメ産業との関連性が高いVチューバ―には、「2兆円ほどの成長が見込める」との見解を示した。

■ Vチューバ―で理想の姿を体現

 事業目的としてのVチューバ―だけでなく、個人がキャラクター作りから動画配信までを行うパターンもある。専用アプリひとつでキャラクターになりきり、自分の思いやメッセージを発信できる。InstagramやTwitterを使うように手軽だから利用者も急増。2018年ごろから急激に増えはじめ、現在では7000人を超えるVチューバ―がいるとされる。

 「Wright Flyer Live Entertainment」は、Vチューバ―専用のライブ配信サービス「REALITY」を開始した。たくさんの人にチケットを買ってもらえれば、ファンの前で歌やダンスを披露するといった「アイドル体験」を味わえる。ライブ活動やグッズの販売で収益を確保するVチューバ―もいて、有名キャラの『輝夜月(かぐやるな)』は自身のライブチケットが10分で完売するなど、圧倒的な人気ぶりを見せつけた。

 ユーチューバーになりたくても、「顔を出せない」「素性を知られるとまずい」などの事情からなれなかった人も多いだろう。素性を隠したまま活動できるVチューバ―は、ユーチューバー活動をしたくてもできなかった人たちの受け皿としての期待も大きい。

※続きは下記のソースでご覧ください

wezzy 2019.05.31
https://wezz-y.com/archives/66103