鈴鹿サーキットを運営するモビリティランドの山下晋社長は、先日行われたモータースポーツファン感謝デーの際の記者会見において、2019年以降のF1日本GPの開催契約の交渉が難航していることを明かした。

 1987年から続いてきた日本でのF1開催。それが途絶えてしまう可能性があるのか? 現在の状況について、山下社長に詳しく話を訊いた。

「金額だけではなく、それに付随する条件がたくさんあります。金額が高い低いだけの話ではないんですけどね」

 開口一番、現状について山下社長はそう説明した。しかし交渉は、我々の想像以上に厳しいようだ。

「ひとことで言えば、非常に厳しいです。現時点で彼らが提示しているモノと、我々が持続可能なF1日本GPという観点で見て最大限譲歩できるところとの開きは、まだかなりあります。正直、まもなく合意できるだろうというところには、残念ながらまだ辿り着いていません」

 鈴鹿サーキット側は、FOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)との契約を進めるにあたって、どんなことを念頭に置いているのか? それを尋ねると山下社長は、次のように答えた。

「一番大きい要素は、F1日本GPにたくさんのお客様に来ていただけるかどうかです」

 山下社長はそう語る。かつて鈴鹿のF1日本GP決勝には、毎年10万人以上の観客が押し寄せるのが常だった。しかし近年ではその人数も減り、昨年の決勝日の入場者数は6万8000人だった。

「我々としても、世界最高峰クラスのレースを開催し続けたいという想いはあります。しかし我々も民間企業であって、その中で実現可能な構造であるということが、開催の前提になるわけです。他の部門がいくら頑張っても、赤字が出続けてしまうというような結果にするわけにはいかない。そういう面で、我々の主張と彼らの主張にまだ開きがあるということです」

「過去のF1日本GPは、15万人を超えるお客様に来ていただいていた。そうであれば、何の問題もないんです。それでも、権利金がどんどん上がっていってしまえば、いつかはできなくなってしまいます」

「我々としては、より多くのお客様に来ていただけるためにはどうすればいいか……ということも含めて考えていき、その手応えがどれくらい得られるかというところも、契約延長の重要な要素だと思っています。お客様の支持を頂けて、これだったら継続できるかなという手応えが掴めないと、非常に厳しいなという状況です」

 こう聞いてくると、FOMがかなり強気な条件を提示してきたように感じられる。しかし山下社長はそれを否定。あくまでこれまでの条件の延長線上だと強調した。

「ものすごく厳しくなったわけではないです。基本的にはこれまでの延長線上です。驚くべきような内容ではありませんが、『それではウチは厳しいんです』ということです」

 リバティ・メディアが買収したことにより、FOMの運営方針は大きく変わった。その結果、FOMはこれまでには考えられなかった、様々な協力を惜しまなくなったという。

「高い権利金を要求してくるのは、私は当然だと思っています。リバティ・メディアはFOMという会社を、それなりの金額で買収したわけです。彼らもF1というイベントを通じて、アメリカの民間企業として採算を取らなきゃいけないですから」

 そう山下社長は語る。

「しかし、前体制自体からの契約が有効な部分もまだ多々ある。それは彼ら(リバティ・メディアが買収した後のFOM)にも変えられない。そんな中でも彼らは頑張ってやっています。例えば、過去に比べてプロモーションには莫大な金額を投入してます。でも、彼らもまだ実入りは増えていません」

「そういう状況の中で『鈴鹿の言う通りだから、権利金をグッと下げてあげるよ』ということには、簡単にはならないだろうなというのは理解しています」

つづく

3/21(水) 13:13配信
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