●実はバブルの野球人気、NPBの野球振興に疑問

江本氏によると、現在のプロ野球人気は一般的なイメージとは反対に最高潮に達しており、「バブル」と評してもいいレベルだという。

「いまだにメディアで『プロ野球の人気低迷が続いています』などと発言する識者や関係者がいますが、球場に足を運んだらそんなことは言えません。
チーム名は伏せますが、シーズン終盤で最下位争いというカードでも、あきれるぐらい観客が入っています。

価値が低いと思われるような試合にもかかわらず、興行的には成功している。これが、バブルともいえる今のプロ野球人気です。
しかし、厳しい指摘をさせてもらうと、今球場に足を運んでくれているファンのなかには、単に騒ぎに来ているだけという人も少なくありません。
特定の選手を応援しているわけでも、チームの勝利を祈っているわけでもないのです」(同)

プロ野球人気が高止まりとなれば何よりだが、そんなシナリオは現実性に乏しい。
ブームが去れば、必ず低迷期が訪れてしまう。それを防ぐには、どうしたらいいか。そんな観点から、交流戦を見直す必要に迫られている。

「せっかく定着したのですから、廃止する必要はないかもしれません。とはいえ、たとえばメジャーリーグの交流戦であるインターリーグは、全チームの対戦は行われません。
ファンの要望や地理的条件を勘案してカードが組まれます。これは、日本でも参考にすべきではないでしょうか」(同)

プロ野球に昔と変わらぬスポットライトが当てられているのは事実だが、そんななかで11年にはプロ野球選手の年金制度が解散に追い込まれている。資金難が原因だ。
江本氏は「交流戦の収益のなかから年金の資金を拠出するなどしていれば、解散に追い込まれることはなかったでしょうし、僕も交流戦の見直しを訴えたりはしません」と言う。

「今の選手たちは、僕らの頃に比べてはるかに高額の年俸を手にしています。とはいえ、30代後半まで1軍でプレーできる選手など、ほんの一握りでしょう。
球界全体の収益や全選手の生活保障を考えたときに、今のプロ野球人気と昔の巨人人気が圧倒的だった時代のどちらがよかったのか、今こそ冷静に比較すべきではないでしょうか」(同)

「プロ」野球である以上、興行収入を最大化しようとするのは当然かもしれない。しかし、江本氏は「利益の使い道も問題だらけです」と指摘する。

「興行を優先してペナントレースの魅力を激減させたというのは、交流戦だけでなくCS(クライマックスシリーズ)の責任も大きいですが、
その収益を子供にプロ野球の楽しさを伝える事業に使ったり、アジアに野球を広める活動に投下したりするのであれば、まだ理解できます。
しかし、残念なことにNPB(日本野球機構)は世界レベルでの野球振興もできていないのです」(同)

野球の競技人口が減少しているという調査結果は、すでに発表されている。
日本中学校体育連盟によると、男子の軟式野球人口は30万7053人(09年)から18万5314人(16年)に激減している。

仮にプロ野球選手がゼロになってしまえば、交流戦どころかペナントレースを開催することもできなくなってしまう。こうした危機感を、ファンも持つべきだろう。

●交流戦が廃止されても野球の面白さは失われない

しかしながら、江本氏は最後に「ゆくゆくは交流戦が廃止されたとしても、野球のおもしろさは失われないでしょう」と断言する。
真の発展のために苦言を呈することはあっても、野球というスポーツそのものの力は信じているということなのだろう。

とにもかくにも、間もなく交流戦の幕が開く。今年は、グラウンドで躍動する選手の姿を楽しむだけでなく、
「グラウンドに落ちているゼニ」のゆくえに思いを馳せてみるのも、ファンとしては大切なことのようだ。

(文=編集部)

Business Journal / 2017年5月30日 20時0分  一部抜粋
https://news.infoseek.co.jp/article/businessjournal_340401/?p=3