人口154万人を超える都市、神奈川県川崎市。2021年夏、この街で栽培されたブドウを使い、醸造までを一貫して行なった初の「川崎ワイン」が完成した。造り手は、農業生産法人・カルナエストの山田貢代表。地元である麻生区岡上を守るための新たな挑戦を追った。

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《2020年夏に完成した「蔵邸ワイン」は、原料栽培から醸造まで全て神奈川県川崎市で行われた初の川崎ワインだ》
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 日本国内でワイナリーが急増している。

 国税庁の調査によると、果実酒製造場数は2014年3月末に334場だったのが、19年3月末には約1.4倍の466場に。そのうちワインを製造するのは331場(19年)で、こちらは年間20〜30場も増えている。国の特区制度を活用することで参入障壁が下がっていることや、「日本ワイン」に対する人気や需要の高まりなどが背景にある。

 ワイナリーの絶対数が増えたことで、産地にも変化が見られる。山梨、長野、北海道といった地域が大半を占めることには変わりないものの、近年は都心でワイン造りを行う「都市型ワイナリー」も出てきている。

 ただし、その多くは醸造施設のみで、原料となるブドウは他の地域から調達している。そうした中で、ブドウの栽培から醸造までを一貫して行っているワイナリーが神奈川県川崎市に誕生した。仕掛け人は、農業生産法人・カルナエストの山田貢代表。本格的な都市型ワイナリーとして、周囲の期待は大きい。

■反対を押し切って美容の世界へ
 カルナエストのブドウ畑があるのは、川崎市麻生区岡上(おかがみ)。

■農家に対する尊敬の念を知る
山田さんがワイン造りを始めたのは13年。もともとは関心もなく、「儲(もう)からないと思っていた。

クラスメイトたちが、ブドウ農家のことを「造り手」と呼び、尊敬の念を抱く様子を見て、さらにショックを受けた。

 「え、造り手って、泥だらけで農作業している、うちのじいさんのような人のことでしょ……?」
《岡上にあるブドウ畑》
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■神奈川県で初のワイン特区へ
酒税法において、ワインは年間6000リットル(750ミリリットル瓶で換算して約8000本)以上の生産量がなければ、酒造免許を取得できない。
結局、山田さんの初めてのワインは、東京都練馬区の醸造所に委ねられることとなった。

 その後、川崎市は内閣府とやりとりをしながら特区の申請手続きを進める。20年1月に申請が完了し、3月に「かわさきそだちワイン特区」として認定を受けた。これは神奈川県で初のワイン特区となった。

川崎市でワイン造り、都市農業の変革目指すカルナエスト・山田貢代表の熱情
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2109/17/news044.html
2021年09月17日 05時00分 伏見学,ITmedia