奈良時代の高僧・鑑真が創建した「唐招提寺」(奈良県奈良市)の寺宝や宗派を超えた名宝で日本戒律の歴史をたどる、『凝然国師没後七百年 特別展「鑑真和上と戒律のあゆみ」』が3月27日から「京都国立博物館」(京都府京都市)で開催される。

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仏教美術の展覧会は何度も開催されてきた同館。今回は、「日本にもたらされた戒律がどのように広がりをみせたのか、大きなあゆみを体感する視点の非常に珍しい展覧会」と、佐々木丞平館長は説明する。

鑑真が唐からもたらした「戒律」によって、日本仏教は大きく発展。「戒」は仏教徒が守るべき道徳規範、「律」は僧侶が守るべき規則のことで、そんな鑑真から受け継がれた日本戒律の祖師たちの功績を5つの章に分けて紹介される。

今回の見どころは、京都では45年ぶり、寺外では12年ぶりの公開となる国宝「鑑真和上坐像」(奈良・唐招提寺蔵)。日本最古の肖像彫刻であり、生きているかのような写実性に優れた天平彫刻の傑作のひとつだ。

また、鎌倉戒律復興運動の屋台骨を学問的に支え、戒律を語る上で欠くことのできない凝然(ぎょうねん)国師の700年遠忌も記念。籔内佐斗司氏により制作された「凝然国師坐像」が初公開される。

同展担当の大原嘉豊研究員は、「例えると、戒律は会社の設立理念。戒は社訓、律が社則や就業規則のようなもの。戒律は教えそのものではなく、お坊さまのアイデンティティです。
各時代で社会運動を巻き込んで発達していき、今の日本人の倫理観につながっていくので、こういう時代だからこそ、振りかえる機会になれば」と話す。

会期は5月16日まで。一般1800円、大学生1200円、高校生700円。

書き手・いずみゆか

https://news.yahoo.co.jp/articles/29e38f0e59fe2310004732fd7d68664fe77cbac2