── 今回のお題は話題のアニメ監督・新海誠についてです。
『君の名は。』(16)は興収250億円を弾き出し、それに続く新作『天気の子』(19)はいま現在100億円を突破しています。
押井さんはこの2本、ご覧になっているんですか?

押井 観てないよ。新海誠で観ているのは、宇宙で少女がロボットと戦い、地球で少年が彼女を待っているという作品。
確かこれが『ほしのこえ』(02)じゃないかな? 彼の劇場デビュー作じゃない? いつものように全編を観ているわけじゃないけど、一応SFなのでトライした。

ところで、ひとつ言っておきたいんだけど、多くの人がアニメ監督はアニメを観ていると思い込んでいるようだけど、そんなことまったくありません。
私がすべて観ているのはジブリ作品だけ。これも本(『誰も語らなかったジブリを語ろう』)を出したから観ただけで、それまでちゃんと観ていたわけじゃない。
『エヴァンゲリオン』も劇場版は最初の作品だけ。TVシリーズは最初の1話と、あと数エピソードくらい。そういうもんですから。

── 新海誠の作品はその『ほしのこえ』の一部だけなんですね。
この作品は彼が監督から脚本、キャラデザイン、作画、美術、編集等、すべてをひとりでやった作り方が大きな話題になりました。

押井 彼が登場したとき、ひとりでアニメーションを作れる時代になったんだと思ったんだよ。
作品の出来よりもそっちのほうが衝撃的だった。
このスタジオ(プロダクションI.G)でも、話題になったというより物議を醸した。
中には頭にきている古株やベテランのアニメーターもいたくらいで。
いや、新海に対してじゃないよ。新海に憧れてしまった若いアニメーター連中に頭にきたの。

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