慰安婦財団解散、届かぬ支援 受給望んだ遺族ら15人 「一日でも早く受け取りたい」

 韓国の文在寅政権が、2015年の日韓慰安婦合意で設立した「和解・癒やし
財団」の解散を進めていることに対し、元慰安婦の遺族らから不安の声が上がって
いる。財団の事業が宙に浮いたことで、受け取れる支援金が届かないためだ。今後
の事業をめぐる日韓の協議は滞ったままで、解決の糸口は見えていない。
 財団は日本が出した10億円を財源に、元慰安婦47人に1人あたり支援金1億
ウォン(1ウォン=0・09円、約900万円)、遺族199人に同2千万ウォン
を支給する事業に取り組んだ。財団関係者などによると、このうち受給を希望した
のは元慰安婦36人と遺族71人。ただ、昨年11月に文政権が日本の同意なく
財団解散を決めたため、元慰安婦2人と遺族13人には支援金が払われていないと
いう。 こうした遺族の1人で仁川市の女性(58)は5月中旬、取材に対し、
「(支援金は)慰安婦だった母が受け取ることができたお金。遺族として一日でも
早く受け取りたい」と語った。
 女性の母は韓国政府から認定された元慰安婦で、1994年に亡くなった。女性は
16年に財団ができた後も、韓国メディアが合意を批判的に報じていたため、「受け
取ってはいけないお金だ」と考え、すぐに支援金を申請しなかった。
 18年になり、大学生の長女(25)から、支援金事業の目的が元慰安婦の名誉や
尊厳の回復だと知らされた。「支援金は貧しかった母が残してくれた贈り物」と思い
直して申請。同年10月に受理されたが、支援金は今も受け取れていない。(略)

 文政権は、一部の元慰安婦や遺族が批判する日韓合意を朴槿恵前政権の「失政」と
位置づけ、「被害者中心主義」による問題解決を唱えてきた。
 大統領府元高官は、当初は財団に代わり、韓国政府主導の支援策や追悼事業を日本
の理解を得ながら進める考えだったとし、「日本側が反発し、前に進められなくなった」
と言う。問題解決の青写真作りを念頭に18年夏に設けた韓国の慰安婦問題研究所も、
所長が辞任するなどして新たな事業案をまとめられておらず、未受給の「被害者」が
放置される状態が続く。(略)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14049482.html