なぜ「韓国人です」と言ったのか?

ところで、この映像の冒頭で安田さんは「私の名前はウマル。韓国人です」という不可解な言葉を発している。彼が日本人であることは夫人も会見で確認しており、
韓国人というのは明らかに事実に反する。安田さんはなぜこんなことを口にしたのか。

これまで3年を超える期間を武装勢力に拘束され、あらゆる面で厳しい環境に置かれ続けた安田さんである。考えたくはないが、精神に異常をきたしたとしても不思議ではない。
頭が混乱した状態で飛び出した言葉だという解釈もありえよう。
そうではなく、安田さんが正常な判断力を保っているとしよう。安田さんが発したのが、犯人グループに強いられた通りの言葉だとすれば、「ウマル」、「韓国人」は、犯人グループから、
映像を見るであろう何者かへの「暗号」だった可能性もあるだろう。

しかし私は、安田夫人の会見を聞きながら、もう一つ別の可能性を考えていた。それは、安田さんが、自らの意思で荒唐無稽な言葉を発し、犯人グループの意図をくじこうとしたというものだ。
「助けてください」と言わされているが、それは私の真意ではない、日本のみなさんはこの映像を相手にしないように、というのが安田さんのメッセージだったのではないか。
まさか!と思われるだろうが、安田さんを知る者の一人として、私にはそう解釈することがもっとも自然に思われるのだ。

安田さんが拘束された翌月の2015年7月、スペイン人ジャーナリスト3人が同じ武装勢力に拘束された。その際、スペイン政府は救済委員会をつくり、交渉により10ヵ月で解放に導いている。
一方、残念ながら、日本政府が具体的な救出に動いているようには見えない。日本政府は国民を保護する義務があり、その無策が「自己責任」論で免罪されてはならない。
安田さんが悲壮なまでの責任の取り方を選び、夫人自ら会見を開かざるを得ないところに追い込まれているのはなぜなのか。問いかけられているのは日本の政府と私たちである。
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