ホンダ・シビック・タイプRプロトタイプ、国内試乗

文・ジム・ホルダー 

あらかじめ言っておくが、このレビューでは結論は出せない。多くの開発費と時間を費やして誕生したクルマを、垣間見える片鱗だけで判断するのはわれわれの流儀ではない。

はじめて走るサーキットで、様子をみながら、わずか2ラップ走っただけでは、自身が本当にちゃんとした走りができたのかどうかを判断することもむずかしい。
旋回時のスピードが速すぎるとリアが出る。旋回時にアクセルを開けすぎると、おもしろいほどにリアは出るが、唐突ではない。
それにしてもこのグリップ。旋回時に頑張っても、アクセルに置いた足はそのままでよい。タイヤやステアリングは、もがくが、心配することはない。
そして、絶え間なく続く、ステアリングからのフィードバック。足元で起こっていることが、手に取るようにわかる。

すごいのは、私の横に座る事になった、気の毒なエンジニアである。勢いよく繰り出し、ハードなブレーキングや全開加速を繰り返し、試乗車をこれでもかと酷使しても、顔色ひとつ変えることもなかった。
反対に、彼は笑顔を見せたかと思えば、たまに笑ったりもしたが、ちょっとミスしたな、と思った時に、メモを取っていた。果たして私の成績はどうだったのか、結果を知るのが怖い。もう呼ばれないかもしれない。
彼がメモを整然ととることができたのは、よくできた、スポーツシートのおかげでもあるだろう。試乗を終えたドライバー達は、口を揃えて、このタイプRに乗ることは苦行ではなく快楽であると自信をもって語った。

ロールやグリップ、スタビリティに妥協があったのかどうかを確かめるためには、わたし程度の技量では無理である。日本人のジャーナリストと呼ばれるひとは、いつもこの程度の時間でクルマの善し悪しを見極めているのだろうか? だとしたらすごい。
その他に関しては、あなたの想像通りであろう。これまで以上に素敵なエンジン、軽快な変速機に、期待通りのインテリア。いずれも悪くない。

https://www.autocar.jp/firstdrives/2017/06/12/224278/