ブラックミュージックを「憧れる」で済ませていいのか─BLM運動を間近で見たNulbarich・JQが向き合った難問
2021年07月08日 18:45 J-WAVE NEWS
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今年4月に4thアルバム『NEW GRAVITY』をリリースしたNulbarich。JQは昨年、ロサンゼルスに拠点を移し、Black Lives Matter運動を間近に感じることになった。それは、ブラックミュージックに抱いてきた「カッコいい」「憧れる」という感情を捉え直すきっかけになったそうだ。

マインドにどんな変化があったのか? ロサンゼルスでの経験や、『NEW GRAVITY』でコラボをしたアーティストについて、ライブへの思い、そして7月17日(土)に出演する「J-WAVE LIVE 2021」への意気込みまで、多岐にわたってインタビューした。

(※中略)

◆「名曲って生まれないほうがいいのかな」BLM運動でブラックミュージックへの捉え方が変化した
――JQさんは昨年、拠点をアメリカに移されました。

そもそも僕はアメリカの音楽が大好きで、日本にいるときから積極的に聴いていたけど、日本では自分から触れにいかないといけないじゃないですか。でもアメリカでは、お店とかで当たり前に流れている。意図しないところでのインプットは増えたというか、日常的にそういった音楽に触れられることは、感覚的にも違ったのかなと思いますね。

――新型コロナだけでなくBlack Lives Matter運動もあり、気分が落ち込んだことはなかったですか?

そもそも外に出るタイプじゃなかったから、ロックダウンは平気でした(笑)。ご飯に困るくらいかな。でも、Black Lives Matter運動に関しては映画で観ていたような光景が目の前に広がっていて、家の前で車が燃えていたり、銃声が聞こえてきたり。どこか海の向こうの話だったものを肌で感じるのは、意識的にも違いましたね。こういうところからいろんな音楽って生まれているんだなっていうのは実感しました。

――それはどういうふうに?

ブラックミュージックの捉え方がかなり変わりました。黒人の方が差別をされている中で嘆き、いろんなことを生み出しながら生まれた音楽だとどこか美しく捉えていたものを、より生々しく感じたというか。そこから生まれたものをカッコいいと思っていいのか、そこに対してリスペクトするってなんだろう?という感覚になってしまって……。単純にカッコいいと思っていたけれど、すごくつらいことが起きる中で生まれたもので。ブラックミュージックに憧れるってどういうことなんだろうって。

――そういった背景で生まれたものをカッコいいって言っていいのか。

そう。よくわからなくなっちゃいました。MTVか何かが看板を出していたんですよ。「(憧れてないで)助けろよ」「そういうレベルじゃないんだよ、僕たちが抱えていることは」みたいな広告に、ハッとしちゃって。昨年、多くのアーティストがBlack Lives Matterに対しての曲を出していて、それがひとつのトピックとしてグラミーにノミネートされていく。悲しい出来事の希望のひとつとして名曲が生まれていくんだと思ったんです。だとしたら、名曲って生まれないほうがいいのかなとかね。

――確かに、背景を考えるとそう思ってしまうかもしれないですね。

黒人差別への怒りや、みんなの叫びを形にするために曲が作られ、そこに大衆性が生まれていく。ハッピーな状態は人それぞれだけど、大きな悲劇や事件があると全員がそれに対して悲しむから、ひとつの希望として曲が生まれ、名曲になっていくというか。ボブ・マーリーの曲もそうだと思うし、『What's Going on』もそうだと思うし。

――マーヴィン・ゲイですね。