高校野球で脱「勝利至上主義」のリーグが広がる訳
甲子園と異なる価値観で運営「Liga Agresiva」

広尾 晃 : ライター

2021/06/27 6:00

『「甲子園のアンチテーゼ」を行く高校野球の凄み』で、高校野球のリーグ戦「Liga Futura」について紹介した。10〜11月に、地域の高校がリーグ戦を展開するというものだ。昨年の時点では大阪府、長野県、新潟県で行われていたが、今秋からリーグ名は「Liga Agresiva」と改称され、参加する都府県、参加校ともに大幅に増える見込みとなっている。

昨年は大阪府10校、長野県8校、新潟県8校の3府県26校だったが、今秋は9都府県64校程度に増えそうだ。

高校野球のリーグ戦はそれほど珍しいわけではない。各地方で高校が集まってリーグ戦が行われている。下級生や控え選手に出場機会を与えたり、練習試合のモチベーションを高めたりするために行われるのだ。「Liga Agresiva」にも、そういう目的は当然ある。しかしそれだけではないのだ。






他のリーグ戦にはない3つのコンセプト

「Liga Agresiva」はリーグ戦運営のコンセプトとして3つの柱を設定している

1.球数制限

高野連も「7日間で最大500球」という球数制限を導入しているが、これよりもはるかに厳しいアメリカの「Pitch Smart」に近い1日の投球数100球程度の上限を設けている。このルールによって、投手の肩肘の負担が軽減されるほか、複数の投手の起用が前提となり、とかく「エース中心主義」になりがちな高校野球の戦術が変わる。またスライダーやフォークを禁止して、チェンジアップ、カーブを推奨し、変化球の割合も設けている。

2.低反発バットの使用

甲子園で使用する高反発の金属バットではなく、アメリカの「BBCOR.50」という規格の金属バット、あるいは木製バットを使用する。高反発の金属バットは、大学、社会人、プロでは使わないため高校球児はステップアップすると「バットのギャップ」に苦しむが、高校時代から低反発バットに慣れることで、芯に当てて振りぬく打撃が身につく。さらに打球速度が遅くなることで、野手は打球を恐れることなく積極的に守ることができる。投打で積極性が身につくと考えられている。

またリーグによって異なるが、全選手の試合出場を義務づけているリーグもある。一戦必勝のトーナメントとは異なり、負けても次があるリーグ戦は、柔軟な選手起用が可能なのだ。
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