中国で経済成長の原動力となってきたインフラ投資を選別する動きが広がっている。

 経済が立ち遅れた内陸部を優先する方向性は変わらないものの、投資の効果が一段と重視されるようになった。不動産不況の長期化で財政が厳しさを増す中、選別の動きはますます強まりそうだ。

 中国外務省の取材ツアーで訪れた四川省カンゼ・チベット族自治州。玄関口として2013年に開設された稲城亜丁空港は、富士山頂よりも高い海抜4411メートルにある。バスで2日かかっていた省都・成都からの移動時間は約1時間半に短縮。観光などで訪れる人は「年々増えている」(自治州幹部)といい、地元の期待は高い。

 中国では改革開放が本格化した1990年代からインフラ整備が急ピッチで進んだ。習近平指導部が発足した12年以降でも、70カ所以上で新たに空港が開港。高速鉄道や高速道路も急速に延びた。

 中国メディアが紹介した専門家の見方では、国内の深刻なインフラ不足は、08年のリーマン・ショック時に総額約4兆元(約80兆円)の景気対策の一環で行われた整備により解決。11年には設備過剰の状態になっていたという。経済成長率が2桁台から1桁台に鈍化する中、膨らむインフラ維持費が国や地方の財政に重くのしかかるようになった。

 中国政府は21年、時速350キロ以上の高速鉄道の路線開設に関し、原則的に年間乗客数が2500万人以上見込まれることを条件とする新基準を打ち出した。カンゼ・チベット族自治州が所属する四川省は人口減や税収先細りを見据え、拠点都市に資本を集中投下する政策を進めているとされる。

 日本でもバブル崩壊に伴い、財政が急速に悪化。新幹線などの建設計画が先送りされ、「失われた30年」とも言われる状況が続いている。中国のメディア関係者は「中国は先行事例として日本に着目している」と話した。 

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