8分間の119番中にはねられ死亡、安全確保の指示なし…東名阪で多重事故
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5/11(木) 6:32配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/b56b292a631c50642c959150322edbbdb0f85b4d

読売新聞オンライン
公開された8分間の119番の通話記録。通報者の発言などは黒塗りされている

 三重県亀山市の東名阪自動車道で3月に起きた多重事故で、中型トラックの男性(53)が亀山市消防本部との8分間の119番中にはねられて死亡した問題で、市は通話記録を一部開示した。男性に安全を確認するやりとりはなく、専門家は「119番中に亡くなる事案は初耳だ。安全な場所への退避を促し、消防の到着を待ってもらうのが良かったのでは」と指摘している。(松岡樹)

 事故は3月27日午前2時頃、亀山市の東名阪道上り線の走行車線で、停止していた軽バンに中型トラックが追突した。さらに大型トラックが突っ込み、中央分離帯に衝突し、上下線に積み荷が散乱。下り線で積み荷を避けようとした軽乗用車に後続の乗用車が追突して、計3人が死亡した。

 読売新聞の情報公開請求に対し、市が公開したのは、亡くなった中型トラックの男性と同本部の通信指令職員とのやり取りを文字に起こしたA4用紙4枚。男性の発言や事故状況に関する情報などは「公共の安全と秩序の維持に支障が生ずる」などとして非公開とされ、一部黒塗りで開示された。

 記録では、職員が、119番してきた男性に対し、衝突した軽バンに乗っていた2人への救護を促す一方で、男性の安全を確認したり、安全確保を指示したりはしていなかった。

 職員は、男性に軽バンの状況確認や、軽バンに乗っていた人への止血などの手当ても要請していた。記録は、職員の「もしもし。もしもし」という男性への呼びかけで終わっている。

 県警は、通話開始から約8分後、後続の大型トラックに突っ込まれて男性が亡くなった際に通話が途切れたとみて、詳しい事故原因を調べている。

 高速道路上からの119番を巡っては、読売新聞の取材で、亀山市を除く県内全ての消防本部が安全確保を通報者に促していることが明らかになっている。

 一方、亀山市消防本部の平松敏幸消防長はこれまでの取材に対し、救護義務を重視していると強調し、「本来危ないところから電話はしていないだろう。こちらから注意させていただくことはない」としている。

 救急現場に詳しい関西大の永田尚三教授(消防行政)は、「職員が通報者に要求していることが多い。今回の事例では、安全な場所で消防の到着を待ってもらうのが良かったのでは」と指摘。その上で、「消防本部には『救助が本来業務で、通報者の安全確保までは仕事ではない』との認識があるのかもしれない。同様の事案は全国で起こり得るため、総務省消防庁などの上部組織が、各消防本部に安全確認と確保を促すよう通達すべきではないか」と話している。