「プリキュア」が子育てやジェンダー描く深い理由
シリーズ開始から20年、大人からも愛される訳

(中略)

2018年に放送された『HUGっと!プリキュア』では、それまでのプリキュアのイメージから一変。「育児」をテーマの1つにして、ワンオペ育児の問題や社会的な問題を取り入れつつ、多様な価値観が丁寧に描かれている。

『HUGっと!プリキュア』は主人公・野乃はなが、空から降ってきた不思議な赤ちゃんを守るため、プリキュアに変身して、悪の組織「クライアス社」と戦うストーリーだ。

野乃はなが周囲の大人たちの力を借りて、仲間たちと協力しながら、一生懸命に育児をしている姿は多くの反響を呼んだ。また、育児だけではなくジェンダーに切り込んだ本作は、まさに次世代へのメッセージだった。

ジェンダーにも切り込んだプリキュア
作中に登場する、天才スケート選手の若宮アンリのキャラクターは、SNSでも話題になった。

若宮アンリは氷上の王子を自称するように性自認は「男性」だが、「女の子らしさ」「男の子らしさ」といった価値観に捉われず、「自分に似合うから」という理由で女性用ドレスも着こなす。学校で男子生徒にからかわれても、毅然とした態度で自分の意見を語る、誇り高いキャラクターだ。

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主人公・野乃はなの「男の子だってお姫様になれる!」というセリフや、アンリの強い心は未来を生きる子供たちや現実を生きる私たちへの強いメッセージだったのではないだろうか。

ネット上では当時、アンリがプリキュアになったことが話題になっていた。

しかし、作中では「男性でありながら、プリキュアになれた」とするような過剰な演出はされておらず、「若宮アンリが再び立ち上がること」のほうに重点を置いていた。

決して価値観を押し付けるのではなく、「誰だってなりたい自分になれる」というメッセージが込められている。

女の子が仮面ライダーを好きなってもいいし、男の子がプリキュアを好きなってもいい――。作品を通して「多様な価値観」を自然に子供たちに伝え続けたこともプリキュアの偉業と言えるだろう。

プリキュアを通して多様な価値観を受け入れる
プリキュアは、『ふたりはプリキュア』のジェンダーロールの脱却から始まり、個の尊重や多様な価値観を積極的に取り入れてきた。

しかし、プリキュアは「ジェンダー意識を変える」ことが主目的ではなく、あくまでも子供たちが楽しめるアニメを前提として制作されている。

『プリキュア』の主なターゲットは、保育園や幼稚園、小学校など家庭以外の場に身を置くようになり、環境が変わってくる年頃の子供たちだ。

家族とは違う「他者」と関わり、自分とはまったく違う価値観に初めて触れることになる。新しいものに触れ、自分とは違うものを受け入れて、学んでいく時期にあたる。

プリキュアを通して、「多様な価値観」を自然に受け入れ、可能性を広げてほしいという制作側の思いが込められているのだ。

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