ただ、私にとってコーヒーは、ヨーロッパやアメリカではなく日本の文化だ。

北京での大学生時代、日本人の友人が長城飯店(シェラトンホテル)の喫茶店に連れて行ってくれ、そこで初めてコーヒーを飲んだ。
味の良し悪しは分からなかったが、一生忘れられない経験になった。

そして大阪から短期留学に来た男性が、お土産としてくれたのがインスタントコーヒー。その1瓶のネスカフェを半年かけて飲んだ。

私にとってコーヒーは贅沢の象徴、日本が教えてくれた最高の嗜好品だった。

その後、東京に来て、日本人は本当にコーヒー好きなのだと分かった。今となっては少数派だろうが、当時ランチタイムには、
多くの会社員が定食屋やレストランで昼食を取った後、喫茶店に寄ってコーヒーを飲んでから職場に戻っていた。

知り合いの社長に、「これは大人のたしなみだよ」と新宿にある「凡」という喫茶店に連れて行ってもらい、高価なカップで
提供される「凡のフルコース」をおごってもらったこともある。5種類のコーヒーを楽しめるコースで、なんと約2万円だった
(この素晴らしい喫茶店は今もあるので読者の皆さんもぜひ)。

大手メーカーのインスタントコーヒーから、店主が1杯1杯丁寧に淹(い)れる喫茶店まで、私にコーヒーを教えてくれたのは日本人だった。

考えてみると1969年に缶コーヒーを開発したのも日本人だったし、安くておいしい日本のコンビニコーヒーには外国人も驚いている。
日本のコーヒー文化はかくも多様で、奥深いのだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/05347f4c93b42758832296ceb7a522a1f8b65267