〈独自〉海保予算大幅増へ 安保関連予算算入で政府

政府が、令和5年度以降の防衛力の抜本的強化に合わせて海上保安庁予算を大幅に増額させる方向で調整に入ったことが21日、分かった。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺における中国の一方的な現状変更の試みを踏まえ、海上警察機能を強化する。北大西洋条約機構(NATO)が加盟国に国内総生産(GDP)比2%を求める国防費の基準を念頭に、海保予算を安全保障関連経費に算入する方針。

複数の政府関係者が明らかにした。海保予算は令和4年度当初と3年度補正で計2618億円。政府は人件費を除く事業費約1500億円を倍以上にする方向で検討している。

NATO基準は海保に当たる沿岸警備隊の経費を国防費に算入する場合、「軍事戦術の訓練を受け、軍隊としての装備を保有し、軍の指揮下で直接行動できる」と規定。しかし他国から侵略を受ける武力攻撃事態が生じた際、防衛相は自衛隊法80条に基づき海保を統制下に置くことができるため、NATO基準と整合性が取れると判断した。

海上保安庁法25条では「軍隊の機能を営むこと」を禁じているが、NATO加盟国のポーランドは軍事機能がない国境警備隊経費を国防費に参入している。

ただ、武力攻撃事態の下で防衛相が海保を統制することを想定した対応要領は策定されておらず、有事を想定した共同訓練も行っていない。このため、政府は対応要領を策定し、自衛隊と海保の連携を強化する。

防衛費を含む安保関連経費はインフラ整備費、研究開発費も算入され、大幅に増えたかのように見せて防衛費の伸び幅を抑えたい思惑も財務省内にはある。年末に改定される中期防衛力整備計画で今後5年で必要な防衛費が確保できなければ、自民党内から政権批判が強まる可能性もある。

https://www.sankei.com/article/20221021-CQ3HM2TSPZI6XDKK7CFUP55N6Y/