訓練なく2週間で戦死 予備役「無言の帰郷」―ロシア

 ウクライナ侵攻で苦戦するロシア軍を支えるべく、プーチン大統領が9月21日に予備役の部分動員令を出してから3週間余りが過ぎた。目標とする30万人のうち「20万人以上が集まった」(ショイグ国防相)とされる。一方で、動員からわずか約2週間で「無言の帰郷」を遂げる若者らの例が伝えられており、十分な訓練を受けないまま戦地に送られている実態が明らかになりつつある。

 「残念ながら徴兵事務所が5人の死亡を確認した」。中部チェリャビンスク州は13日、地元メディアにこう説明。「1人当たり追加の弔慰金100万ルーブル(約230万円)が支払われる」とも述べた。

 英BBC放送はうち3人を特定。知人らに取材したところ、訓練なしに前線に配置された疑いのあることが分かった。9月26~29日に招集された後、早くも今月3日にウクライナ東部ルガンスク州に。その後、南部のヘルソン、ザポロジエ両州に送られ、9日に家族が死亡告知書を受け取った。動員に伴う死者の「公式発表」はこれが初めてという。

 一方、当局が不都合と見なして隠蔽(いんぺい)を図るケースもあるようだ。ロシア中部スベルドロフスク州の28歳男性は9月28日に招集され、数日後にウクライナに派遣。今月10日に戦死し、インターネット交流サイト(SNS)で情報が伝えられた。徴兵事務所は母親に「生きている」と説明したが、妻がSNSで事実と確認した。

 「訓練なしに送られる」という告発は以前からあり、プーチン氏は9月29日の時点で「追加訓練も行わなければならない」と厳命した。ただ、その頃に招集された予備役が約2週間で死亡していることに鑑みると、命令は守られていない可能性が極めて高い。ロシア軍の人員補充が「待ったなし」であることの裏返しとも言える。

 SNSには、第2の都市サンクトペテルブルクの弁護士や28歳のモスクワ市職員も戦死したと投稿された。

 独立系メディアは12日、ロシア当局の内部情報として、侵攻が始まった2月下旬以降のロシア軍の損害が、死傷者と行方不明者を合わせて計9万人以上に上るとみられると報じている。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2022101400722&g=int