7月10日の参院選投開票が迫ってきた。IT技術が浸透するなか、選挙のたびに「なぜネット投票ができないのか」という話題が沸き起こる。ネット投票は技術的に実現可能なのか、実施に伴うリスクはあるのか。令和元年7月に産経ニュースに掲載された連載記事「ネット投票の足音」のアーカイブ記事から考えたい。

連載の(上)では、ネット投票先進国でもあるエストニアの実情をリポートした。エストニアが、デジタル化が進むIT先進国となったのには、資源の乏しい小国の生き残り戦略という背景があった。1990年代からITを生き残る手段として重視し、ネット環境整備に積極投資した歴史があるという。投票にかかる時間は、わずか1分程度。「投票所にいくのが面倒くさい」と思う人も、ネット投票なら、一票を投じるかもしれない。

連載の(中)では、失敗に終わった国内の電子投票についてとりあげた。電子投票が頓挫するきっかけとなったのは、平成15年の岐阜県の可児(かに)市議選。サーバーの不具合で1時間以上投票ができず、さらに誤操作により、投票総数が投票者数を上回る事態が起きた。訴訟にも発展し、最高裁で選挙の無効が確定。結果、市は再選挙を余儀なくされた。関係者が口をそろえる「可児ショック」と呼ばれるできごとだ。


なぜネット投票は実現しないのか
2022/7/2 10:00
https://www.sankei.com/article/20220702-PHEEPMJTI5O5JPUNDXIYOJMFFA/