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ランド研究所が描いた「ロシアを潰す方法」

2015年の国際経済フォーラムに参加したプーチン。中央奥は杉田弘毅氏 写真:杉田氏提供

杉田 2019年にアメリカの安全保障系シンクタンク、ランド研究所が興味深い報告書を出しています。
「ロシアをいかに潰すか」がテーマなのですが、ロシアの弱さは経済だとの指摘があります。
ロシアにはエネルギー以外何もない、あとはせいぜい農産物。だからエネルギーを無力化すればロシア経済が潰れ、
国家が潰れるというシナリオですね。その手段として挙げているのは、ある意味当然のことではありますが、
シェールガスをバンバン掘って、北海油田と中東にもどんどん石油を出させるというものです。

 今回バイデンが軍隊を出さなかったのも、実はロシア泥沼の長期戦争に誘い込み、経済を標的にして
無力化する謀略だったと主張する人もいるくらい。これはさすがに陰謀論に過ぎますが、
少なくとも経済制裁は報告書のシナリオ通りに進んでいるといっていい。中国やインドが買い支えするだろうけど、
ロシア経済が傷むことは明らかです。ロシアの強みの核兵器を維持、開発するのに必要な膨大な費用も賄えなくなってしまう。

畔蒜 中国は間違いなくロシアを支えるでしょうし、習近平は決してプーチンを見捨てないと思いますが。

杉田 私もそう思います。ただ習近平にしてみれば、見捨てる、見捨てないではなく、使えるものは使う。
米中対立という大きな構図の中で、ロシアは、もはや中国の「切り込み隊長」程度の存在になります。今後は中国がこれをどう使うかにかかってくる。

畔蒜 アメリカとの最終的なゲームを考えた時、ロシアの存在はあった方がいい。ロシアが無くなったら、
アメリカの圧力を一身に受けなくてはならないし、ロシアには引き続きベラルーシに核を置いてくれる存在であってほしい。

 ただ、中国だけに目を奪われてもいけないですね。もちろんインドは重要なファクターになりますが、
ランド研究所の報告書にもあるように、ロシア弱体化シナリオは「中東の石油増産」が前提です。
いまその中東が石油の増産に応じない。それどころかUAE(アラブ首長国連邦)などは、
オリガルヒたちの退避先にもなっている。もともとロシアが米国の後退に反比例してグリップを強めてきた地域ですし、
簡単にはアメリカの言う通りに動きそうもないですね。すでにヨーロッパは反ロシアで固まっていますから、
もしかしたら「対中国」よりもさらに大きな視点で、冷戦以来の世界の分断が起こりかねません。
https://news.yahoo.co.jp/articles/781bbbeeeda0945b48b1034c5b5a9a0ba8156b24?page=2