次期衆院選に向けて立憲民主党などの野党に焦りが広がってきた。支持率低迷の続いた菅義偉首相が退陣を表明し「敵失」を期待した選挙戦の構図が一変した。立民は総裁選への関心の集中や新首相への高支持率に危機感を抱き、戦略の修正を探る。
立民の枝野幸男代表は結党1年を迎えた15日、都内で記者団に「政権の選択肢になるという目標に1年で到達できたと思う。あとはここからの戦い方だ」と力説した。

同党は7日に「政権発足後、初閣議で直ちに決定する事項」と題した公約を発表した。
打ち出したのは@森友学園問題の決裁文書改ざんに関する記録「赤木ファイル」関連文書の開示A日本学術会議の人事で任命拒否された6人の任命――など7項目だった。
安倍前政権やその路線を継いだ菅政権で起きた問題を中心に並べた。首相が交代しても自民党政権のままでは扱いにくい内容で、政権交代の意義を訴える。
公約発表は焦りの裏返しでもある。

「あと数カ月、首相に頑張ってほしかった」。首相が総裁選不出馬を表明した3日、立民などから似たような言葉が漏れた。不人気の政権が相手であれば勝機があるとの期待があったからだ。
8月の横浜市長選は首相の地元で野党系が勝利した。立民は追い風ムードと受け止めた。菅内閣の支持率は日本経済新聞社の同月の調査で34%と、2020年9月に政権発足した直後の半分以下の水準に低迷した。
10月に首相が交代すれば、しばらくは「ご祝儀相場」で高めの内閣支持率が続くとの見立てがある。

立民所属議員の一人は衆院選の情勢に触れて「菅さんが辞めると表明しただけで今までリードしてきた分がなくなった。人気の高い首相になれば選挙はものすごい逆風になる」と警戒する。
総裁選は29日の投開票まであと半月ほどある長期戦だ。この間、立候補者による討論会や政策発表でメディアなどの露出が自民党一色になるのを野党は懸念する。衆院選直前という時期に「見せ場」をつくりにくいからだ。

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