ムダな電話対応は廃止せよ “お客様”の相手より従業員を守ることの合理性 (1/2ページ)
中川淳一郎

 職場に寄せられるクレームにより、「仕事にならない!」状態になることは多い。それこそ今年の8月に開幕した
芸術祭「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由展・その後」をめぐりクレームが殺到。
同事務局や愛知県庁には電話がなりやまず、大いに業務に支障が出た。ク
レームの多くがもはや同じような類のもので、電話をする人間本人が怒りを表明するだけで、
受け手には何のメリットもない。疲弊するだけだし、朝、職場に向かう時には
「またあの怒りの電話を何十本も対応しなくてはならいのか…」と憂鬱な気持ちになったことだろう。

 応じる必要がないものばかり

 私だったら多分転職する。そして「一切の怒りの電話を受けなくて済む業務をしよう」が
次の職場を選ぶ判断基準になるだろう。ここで各職場に提案したいのは、電話での問い合わせ窓口の廃止である。

すべてメールでの「問い合わせフォーム」にする。私自身が運営に携わるニュースサイトは
一切電話対応は受け付けず、すべてが問い合わせフォーム経由だ。そこに寄せられるメールを毎日見ているが、
ほとんど対応の必要がないものである。種類としては「営業」「プレスリリースの配信」「抗議」「陰謀論の発表」
「タレ込み」「問い合わせ」「言葉遣いを直す指摘」「罵詈雑言」「身勝手などうでもいいくだらない提案」
「記事の使用許可申請」といったものである。この中で重要なのは最後の「記事の使用許可申請」だけである。
これはテレビ局からのもので、これは自分達にとって売り上げになるから有難い。
「プレスリリースの配信」もこれはこれで有難い。「タレ込み」は時々実を結ぶことがあるものの、妄想じみたものも多い。
この中でもっとも多いのは「罵詈雑言」だ。これは卑猥な言葉を並び立てて編集部を
ボロクソに言うだけのもの。同一人物と思われるものも多く、いつか名誉棄損か脅迫罪で訴えてもいいと思っている。

「抗議」にしても、「この記事を読んで不快になった。謝罪と削除を要求する」といったもので、
応じる必要がないものばかりである。「それはあなた個人の感覚でしかないでしょ?」というものには
対応する必要がない。ただ、問い合わせフォームがない場合、この人物と電話で30分も40分も喋らなくてはいけなかったのである。

 クレームの電話というものは、一瞬の「ガス抜き」としての効果があるわけで、一度対応をしてしまうと
後は揚げ足を取られるのと妙な言質を取られてしまうだけで、相手にしか分も利もない。
だからこそ「電話対応はしません」というポリシーを作ってしまうのがいいのだ。こちらに利がない場合の
電話が来てしまった場合は「すべての対応は問い合わせフォームで対応しています」と言うだけにする。
「電話では対応できないんです」以上は言わない。
https://www.sankeibiz.jp/workstyle/news/191225/ecd1912250700001-n1.htm