焦点:コロナで崩れる東京オフィス需要、淘汰選別が静かに進行

[東京 21日 ロイター] - コロナ禍によるオフィス需要の減退という世界的な現象が、東京でも顕在化し始めた。より良い職場環境を求めて増加していた移転の商談は一変、在宅勤務の広がりでその多くが止まっている。大規模開発真っ只中の渋谷では解約も目立ち始め、東京のオフィスビル淘汰選別が静かに進行しつつある。

<渋谷オフィス街に異変、スタートアップが解約>

100年に1度と言われる大規模な再開発が進む渋谷のオフィス市場に異変が起き始めたのは昨年秋ごろ。それまでは需要が過熱し、空室率も他地区より低かったが、ここにきて入居者を募集する告知が目立ち始めた。オフィス仲介大手の三幸エステートによると、7月の都心5区の平均空室率1.2%に比べ、渋谷区内は1.94%まで上昇、コロナ感染が拡大し始めた3月ごろから急速にその差が拡大している。


不動産賃貸を手掛ける三菱地所リアルエステートサービス(訂正)では、オフィスリースの商談がなかなか成約につながらないとしている。「これまで圧倒的にオフィス拡張の相談が多かったが、足元で縮小・分散の相談が出てきた」と、長政亮・ビル営業部プロジェクト推進課長は言う。

同社が6月半ばに実施した顧客調査によると、コロナ感染拡大に伴い、オフィス移転計画の見合わせ・保留・選定延期など、事実上ストップさせた企業は半数近くに上った。さらに在宅勤務を進める企業が増えた結果、中長期的にオフィス賃貸面積の圧縮を検討している企業が54%あることが分かった。

<既存の契約が解約に縛り>

IT大手の富士通(6702.T)はリモートワークを大規模に導入し、オフィススペースを大胆に削減しようとしている。首都圏に持つオフィス総面積80万平方メートルの50%を削減する方向だ。「もうコロナ前の働き方に戻ることはない」と、人事総務部の森川学シニアディレクターは話す。

富士通にとって、リモートワーク強化の新たなオフィス戦略はコロナ対策という一時的なものではない。今後は取引先に常駐する現場従業員を除く8万人近くの社員を基本的に自宅勤務とし、決まった場所と時間に毎日出社する制約を取り払う。その一方で、社員が立ち寄れるよう、自宅近くにサテライトオフィスを増やす方向だ。

こうした動きを反映し、東急でも沿線などに展開するシェアオフィスへの問い合わせがコロナの感染拡大以降に増加している。今年3月末時点で契約社数は300社を越えたが、足元はさらに10%程度のペースで契約数が伸びているという。

https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-japan-work-idJPKBN25H07N