テレワーク、憧れの書斎は1畳半 改装や郊外へ転居も

「このまま在宅勤務が続くならリフォームや引っ越しをしたい」――。新型コロナウイルスの影響で、テレワークが普及し、自宅にいる時間が増えた。
想定していなかった事態に、家への不満が高まっている。仕事スペースや住む地域……。これまで重視されていた住まい選びの基準が揺らぎ、家への価値観が変わろうとしている。

「仕事に集中できるスペースがほしい」。千葉市のある工務店には、30〜40代の会社員からこうしたリフォームに関する問い合わせが相次ぐ。

この工務店は千葉県中部から北部を営業地域としており、JR総武線や京葉線などを使って東京都心部に通勤する住民も多い。
日本国内で新型コロナの感染者が増えた2月以降、ホームページでテレワークに対応した事例を掲載したところ、閲覧件数が伸び始めた。

部屋に壁を設置して仕事机や書類棚を設けるといった本格的なリフォームや、クローゼットを改造して仕事スペースにするなど様々だが、費用は数万〜20万円。
オンライン会議の普及で画面に映り込んでもいいように背景の壁紙をおしゃれにしたり、子供の話し声が入らないようにといった要望が多いという。
1畳半程度の広さがあれば、パソコン以外に収納スペースもできる。リフォームと同時に太陽光発電も導入し、光熱費負担を抑えたいという声もある。

担当者は「新型コロナ以前にはなかったテレワーク需要。最近まで対面での打ち合わせができなかったが、今後はリフォームに関する相談が増えるのでは」とにらむ。

新型コロナの影響でテレワークが導入されたが、不満も少なくない。リクルート住まいカンパニー(東京・港)の調査では「仕事専用スペースがない」ことに
不満を感じる人が33%に達した。既婚で6歳以下の子供がいる家庭に限定すると、46%が「子どもを見つつ仕事可能な環境がない」と回答した。
こうした不満は、そのままリフォームや住み替えの検討につながっている。

住宅リノベーションのリノベる(東京・渋谷)によると、間取りにも変化が起きているという。設計や施工を担当する安江浩部長は
「子どもに邪魔されずに過ごせるスペースがほしいというリクエストが増えている」と指摘する。

ノートパソコンで仕事する人が多く、大きなスペースが必要なわけではない。玄関横の洋室を改築し、仕事に集中できるスペースなどを提案している。

■テレワーク家具販売も好調

テレワークに対応して家具を見直す家庭も増えている。
家具レンタルのサブスクライフ(東京・渋谷)では、月額2000円前後で借りられる高機能のオフィスチェアや資料などが置けるサイドテーブルを取りそろえる。
「自分に合った家具を手軽に試せる点が評価されている」(担当者)

同業のクラス(同・目黒)では、利用料金の一部を福利厚生の一環として企業が負担するプランも用意した。

家具大手のニトリホールディングスでも、5月の既存店客数は前年同月比6.7%増となり、新しい生活様式に向け家具の引き合いは強い。
自由に組み合わせることができる小型の収納用品や、長時間の仕事でも疲れにくくなる低反発クッションが人気となっている。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60504480Y0A610C2H11A00/