宇都宮市北西部に「徳次郎町」という地名がある。
行政上の読み方は「とくじろう」だが、地元では昔から「とくじら」が常識だった。地元自治会は4月、「本来の読み方に
戻してほしい」と、市に要望書を出した。過去に例がない読み方の変更はかなうのか。

「『とくじら』じゃなきゃダメでしょ」
地元で生まれ育った会社社長斎藤光重さん(62)はそう言い切る。通った保育園、地域に残る戦国時代の城跡、高
齢者施設、三つのバス停、商店の屋号――。至る所で昔ながらの呼び方が使われてきた。

それでも、公的には「とくじろう」だ。時代が進むにつれて不都合も生じてきた。銀行口座を開く際、住所のふりがなを
「とくじら」と書くと訂正させられる。郵便局の名称は33年前、日光宇都宮道路インターチェンジのローマ字表記は12
年前に、行政上の読み方に合わせられた。

「『とくじろう』が正しいと思う若い人も増えてきた。紛らわしい」と斎藤さん。徳次郎保育園の?野順子園長(52)も「住
所と園名の読み方が異なる。電話で問い合わせる人も戸惑ってしまう」ともらす。

お役所がいったん決めた読み方は変えられまいという空気がある一方、愛着ある読み方に戻してほしいとの思いも
地域にくすぶり続けた。

昨秋、自治会役員が市幹部とやり取りした際、読み方の変更が可能なことがわかった。さっそく町内七つの自治会
と富屋地区連合自治会が4月21日、市に変更を求める要望書を提出。市は9年ぶりに「市住居表示等審議会」を設
置することになった。

https://www.asahi.com/articles/ASN506SZCN5WUUHB002.html?iref=comtop_8_04