子どもを「ばい菌」扱い…無言電話も 風評被害、北九州市で相次ぐ

病院や区役所に嫌がらせ
 医療関係者や自治体職員らの新型コロナウイルス感染が相次いだ北九州市で、深刻な風評被害が発生している。院内感染が起きた病院には嫌がらせの電話が相次ぎ、職員の感染が判明した区役所には「公務員なんだから名前を明かせ」などと迫る電話が何度もかかっている。
医療従事者の子どもが保育所に通えなくなる事態も起きた。差別や偏見が関係者を追い詰める風評被害の現場を追った。
 きっかけは休診を知らせる張り紙だった。
 北九州市のある診療所は4月、患者と医療スタッフの感染が確認された。市から診療所名を公表するよう相談されたが、風評被害を恐れて断った。患者の感染と休診を伝える張り紙を入り口に張った。
 すると、何人かが張り紙を写真に撮ってツイッターに投稿した。張り紙の診療所名も写っていた。
 慌てて診療所名を削除した張り紙に換えたが、遅かった。情報はどんどん拡散し、電話が鳴り続けた。無言や「ワン切り」の電話が数日間続いた。
 影響は、それだけにとどまらない。
 「なんですぐに電話をしてくれなかったのか」
 診療所のあるスタッフは、子どもを預けていた学童保育の担当者に勤務先で感染者が出たことを告げると、不満げに言われた。
 このスタッフはPCR検査で陰性を確認していた。だが気まずくなり、しばらく子どもを学童保育に預けられなくなった。その間、子どもの面倒を見るため、出勤も難しくなった。60代の男性院長は「なぜ子どもを“ばい菌”扱いするのか」と憤る。
 院長は知人の医者から「大手の病院から(院長の診療所を)受診した患者は紹介しないように言われた」とも聞いたという。

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