「犯人と間違えられて困っている。実名で報道できないか」。
先日、知人から電話で不満をぶつけられた。
何のことかと思って聞いていると、傷害事件を伝える記事に対してだった

▼逮捕された容疑者は匿名。職業と年齢が同じで、住所も実家の字名になっているので騒ぎになったという

▼知人はSNSで「朝から私の周りでは今朝の新聞の記事で大騒ぎになってます。私は逮捕されてませ〜ん。御心配、ご迷惑をおかけしました」と発信して誤解を解かなければならなかった

▼本紙はことし4月、事件・事故報道を匿名に切り替えた。これまでは犯罪抑止の観点から実名を原則としていたが、凶悪事件を除き、地域性や人権などに考慮して原則匿名にした

▼地域性とは社会的影響の大きさを言う。人権は「推定無罪の原則」を踏まえてのことである。
実際、窃盗未遂の容疑で逮捕された男性が嫌疑不十分で不起訴処分になった事例があった。
実は潔白だったが、当時は実名報道。周囲から白い目でみられる。いわゆる「犯罪報道の犯罪」である

▼一方、匿名にする場合、容疑者を特定できないため、冒頭のように勘違いされるというケースも。
別人があらぬ疑いをかけられないよう、伝える内容に細心の注意を払わなければ。
新聞週間にそんな思いを強くする。(比嘉盛友)

http://www.y-mainichi.co.jp/news/35824/