https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20180807-00092134/
〇バッシングは人を殺す

 安田さんについて、筆者として強く日本の一般の人々や各メディア関係者ら、そして政治家達にお願いしたいことがある。先週、新たな映像
が公開されたことで、SNSや一部のネットメディアでは、安田さんへの激しいバッシングが行われているが、バッシングは人の人生を狂わせ、場
合によっては死にさえ至らしめるものだということを、よく考えていただきたい。ISに拘束された後藤健二さんの救出は、もとより非常に困難
であったが、わずかな可能性をも潰してしまったのは、人質やその家族をバッシングする風潮である。

人質家族が泣き叫べない日本の異常ーイスラム国による邦人人質事件での親族の抑制

https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20150130-00042669/

 安田さんに対して「何度も拘束されているのに、懲りずに危険地に行って拘束されて自業自得だ」という批判がよくあるが、これについても、
誤解や誇張がある。紛争地取材において、数時間や数日、現地の治安当局や武装勢力等に拘束されること自体は、よくあることだ。厳しい環境下
での取材を続けてきたジャーナリストなら、一度や二度は経験するものである。一部、ネット上で指摘されている安田さんの「イラク・バグダッ
ドでの拘束」も、こうした些細なものにあたる。問題は、拘束された上に犯行グループの要求のための人質とされるケースであるが、2004年4月
にバグダッド西方のアブグレイブ近郊で安田さんが地元武装勢力に拘束された件は、厳密に言えば「人質事件」ではない。現地武装勢力は日本
側に具体的な要求をすることもなく、誤解で拘束したことを認め、安田さんに謝罪し解放した*。日本政府は安田さん解放のための身代金を支
払っていないし、イラクから帰国するまでの飛行機代やホテル代も安田さんは自身で精算している。
こうした経緯を踏まえないで、安田さんを批判することは不当であろう。

*安田さん著書『囚われのイラク―混迷の「戦後復興」』、『誰が私を「人質」にしたのか―イラク戦争の現場とメディアの虚構』を参照。

 シリアで拘束される数カ月前の安田さんのツイートもバッシングの的となっているが、こちらも、その経緯を配慮する必要がある。

 安田さんに批判的な人々は、このツイートを元に、「安田さんが自己責任で現地に行っているのだから、彼を助ける必要がない」と主張している。
このツイートでの「パスポート没収」とは、シリア取材を計画していたフリーカメラマン杉本祐一さんのパスポートを、外務省が首相官邸の意向を受
け、強制返納させた事案。海外の各主要メディアや国連の「表現の自由」特別報告者も問題視した報道の自由への弾圧である。安田さんは杉本さんとも面識があり、この件について憤っていた。

世界が報じたパスポートを強制返納させる安倍政権の異常−BBC、CNN、ロイター、NYタイムズetc