「紅白歌合戦」最低視聴率でも評価悪くないワケ YOASOBIとK-POPアイドルの圧巻のパフォーマンス


年が明けた途端、不幸な災害が続き早くも忘れられつつあるが、2023年大晦日のNHK「紅白歌合戦」は旧ジャニーズ事務所(以下、J事務所)のタレントが出演しない紅白として注目された。

すでに報じられている通り、ビデオリサーチ発表の世帯視聴率は第1部が29.0%、第2部も31.9%と過去最低となった。


やはりJ事務所の影響なのだろうか。
そこを探るために2022年と2023年の性年齢別の個人視聴率をスイッチメディア社のTVALという視聴分析ツールを使って比較してみた。(注:TVALはビデオリサーチ社の視聴率とは調査パネルが違うので、数値も違ったものになる)


■2022年と2023年の個人視聴率の変化

まず女性から、2022年と2023年の個人視聴率を比べてみる。

女性はどの世代でも視聴率が大きく下がっている。FC(女性:4-12歳)は17.7%から16.1%と下げ幅が小さいが、その上はFT(女性:13-19歳)が26.0%から22.7%、F1(女性:20-34歳)は21.8%から18.2%、F2(女性:35-49歳)は22.8%から19.8%、F3-(女性:50-64歳)が31.1%から28.3%、F3+(女性:65歳以上)が26.6%から23.1%と、いずれも3%前後大きく下がってしまった。

J事務所が抜けたことが、女性にいかに強い影響を与えたかよくわかる結果だ。


次に男性も比較してみると、女性とは少々違う結果が出てきた。

まずMC(男性:4-12歳)が15.7%から11.0%へと大きく下がっている。女性よりも下げ幅が大きいのが興味深い。

次にMT(男性:13-19歳)は19.3%から18.8%、M1(男性:20-34歳)は16.0%から15.9%、M2(男性:35-49歳)は19.0%から18.6%と下がったものの差は0.5%以内で、女性と比べるとさほどではない。ところがM3-(男性:50-64歳)は25.3%から23.2%、M3+(男性:65歳以上)は24.5%から21.7%と2~3%程度下がっているのだ。

つまり男性ではC層(=子ども)が極端に下がったもののMT~M2の若い層はほとんど下がっておらず、高年齢のM3-、M3+はまた大きく下がっていたのだ。


男性についてはJ事務所の影響がほとんどなく、C層と3層は別の理由で大きく下がったと言えるのではないだろうか。

つまり2023年の紅白はJ事務所が抜けたため女性の視聴率が下がった一方で、高齢者が好む歌手がほとんどいなくなったためこの層の視聴率も減った、と解釈できる。


■紅白の「これまでと異なる点」

さてここからは、今回の紅白についての私の印象と評価を述べてみたい。実は元々、当然下がるであろう視聴率を示した後、もはや紅白歌合戦は時代に求められなくなったのだから、終了年を決めて番組を終わらせる決断をすべきだと書くつもりだった。
公共メディアを標榜していく中で、惰性で続けてきた紅白歌合戦はもう不要だと主張する予定でいた。

ところが2023年の紅白歌合戦に、私は惹きつけられた。
音楽番組として楽しんだだけでなく、そこにNHKが今後目指すべき公共性の一つの姿が見えた気がしたのだ。報道や情報だけでなく、音楽を届けることにもこれまでとは違うNHKの新しいミッションがあると感じた。

実際、今回の紅白は視聴率が最低と報じられても、内容を批判する伝えられ方はあまりしていない。

ここ数年は、視聴率最低記録更新、もはや存在意義なしと罵るような記事が目立ったものだ。またネットでの評判も決して悪くなく、いくつかのシーンに心を動かされたとの投稿も多くみた。


私が感じたのは、紅白はJ事務所と訣別することで、これまでとはまったくちがうエンターテインメントの新たな地平に立てたのでは、ということだ。

それを象徴したのがクライマックスでYOASOBIがグローバルでもヒットした「アイドル」を歌い、次々に登場するグループが目を奪われるほどレベルの高いダンスパフォーマンスでステージを彩った場面だ。


記事全文
https://news.yahoo.co.jp/articles/2568239f0bfac2886196e041ff10f1cc8713502c?page=1