先月半ばごろから、Spotifyなどの定額音楽配信サービスのほか、公式YouTubeチャンネルで特定アーティストの作品を利用できないと騒ぎになった。2018年9月に芸能界を引退した安室奈美恵さん(46)の楽曲やミュージックビデオだ。

 安室さんは初のミリオンセラーとなった「Chase the Chance」(1995年発売)をはじめ、90年代後半から2010年代にかけてヒットを連発。ファッションを真似する女性の間で“アムラー現象”を巻き起こした。突然の配信停止にファンは困惑している。

「Winnyによる違法アップロードが問題になった00年代に、コピー防止機能を備えたCDを発売したり、安室さんは著作権意識の高いアーティストという認識がありました。配信でよく聴いていただけにショックが大きく、CDを断捨離したことが悔やまれます」

 30代の女性ファンがこう話すように、配信サービスが主流の今、現物のCDを所有する人は年々少なくなっている。

「安室さんの配信停止についてさまざまな理由がささやかれていますが、配信の可否はアーティスト本人や所属事務所の意向が大きく作用します。再生回数やダウンロード数で利益配分が変わるなど、プラットフォームのルールに縛られるのを嫌うアーティストはサブスクを避ける傾向にあります」(芸能ライター)

 今年9月、「1/2」などのヒット曲で知られる川本真琴が「サブスクというシステムを考えた人は地獄に堕ちてほしいと思っている」と、サブスクからの上がりの少なさをSNSで訴え、波紋を呼んだ。CDが売れず、配信でも稼げないため、アーティストのビジネスも変化している。

「配信はファンの間口を広げる手段となる一方、稼ぎ方は大きく変化しています。かつて重きが置かれていたCDセールスより、ライブ会場などで販売されるグッズ売り上げが占める割合が大きいようです。数万人のファンがいればビジネスが成立しやすいYouTuberのように、マス相手でなく、売り上げに結びつきやすいコアなファン向けに発信することで、トレンドに縛られず自由に作品づくりができるメリットもあります」(ITジャーナリスト・井上トシユキ氏)

 便利なサブスクサービスだが、アーティスト側の都合などで突然利用できなくなるリスクがあらわとなった。CDに限らず、本やゲームでも本当に大切なものは現物で保有した方がいい。

12/5(火) 9:06配信 日刊ゲンダイ
https://news.yahoo.co.jp/articles/ef4d83102cb6ff7713e41ae1be1ef7c4000ec803

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