大江健三郎さんお別れの会 多くの人が別れ惜しむ|NHK 愛媛のニュース
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09月13日 18時50分

 日本人として2人目のノーベル文学賞作家で、ことし3月に亡くなった大江健三郎さんのお別れの会が東京で開かれ、作家の池澤夏樹さんや俳優の黒柳徹子さんなど交流のあった人たちが別れを惜しみました。

大江さんは、1994年に日本人としては2人目となるノーベル文学賞を受賞するなど、戦後の日本文学界をリードしてきた作家で、ことし3月に老衰のため88歳で亡くなりました。

13日は出版社の有志などが東京でお別れの会を開き、交流のあった作家などが花を手向けました。

会では代表者があいさつし、このうち、大江さんと古くから親交のあった作家の池澤夏樹さんは、自身が「日本文学全集」を編集したときのことを振り返り、「大江さんには、ずいぶん力を貸していただきました。古典の現代語訳を作家や詩人にお願いし、『この全集で少しは日本の人たちが古典を読むようになるといいですね』と申し上げたら『それ以上に作家や詩人が変わると思います』とおっしゃいました。それからたくさんの作家や詩人が古典に材をとり、刺激を受けて次々と新しいものを書いていて誠、先見の明でした」と思い出を語りました。

また、俳優の黒柳徹子さんは、司会を務めるテレビ番組に大江さんと長男の光さんが出演した際、光さんが曲を作ってきたことに触れ、「大江さんは光さんの音楽をとても尊敬されていた。光さんの曲の五線紙が複雑すぎて『もう一度書き直したい』と話されて、大江さんも『それがいい』と話していました。いつも楽しい話をありがとうございました」と感謝のことばを述べました。

そして、現在も大江さんの作品を紹介する活動をしている作家の平野啓一郎さんは、「小説家としてデビューした際、人づてに大江さんから『30歳になるまでは自分の書きたいもの以外は決して書いてはいけない。それさえ守ればあとは大丈夫』と助言をいただき、何があっても心に守ろうと決めました。大江さんの存在は今後も私の文学や政治との向き合い方に対して『本当にそれでいいのか』と熟考を求める励ましに満ちた1つの緊張だろう」と思いを語りました。

主催者によりますとお別れの会にはおよそ300人が訪れ、大江さんとの思い出を語り合うなどしたということです。