2023/06/29 15:20

 5月に81歳で亡くなった元タレントの上岡龍太郎さんが、2000年の引退後にペンネームで作詞をしていた。
歌詞を託され、河内音頭に仕上げた大阪在住の演歌歌手・中村美律子さん(72)が、 訃報(ふほう)を機に“秘話”を明かした。
中村さんは「楽しく、気分が高揚する歌詞で、何をしても才能のある人だと思った。大切に歌い続けたい」と話す。(渡辺彩香)






三池嵐次郎名義

 引退後は表舞台から姿を消した上岡さん。中村さんが共通の知人を介して歌詞を受け取ったのは15年のことだ。
上岡さんとは1960年代にイベント会場であいさつを交わした程度。
驚いたが、「『みっちゃんに歌ってほしい』と上岡さんが言ってるから」と伝えられ、曲を付けることにした。

 原稿用紙に丁寧な字で、<仮題「酒飲め音頭」>と書かれていた。<春は桜の花見酒>と始まり、
<酒は飲め飲め百薬の長/憂いを払う 玉箒たまぼうき /(略)/飲んで歌って踊ろうじゃないか>とリズムよく4番まで続く。

 「僕の名前は絶対に出さんといて」。曲作りの打ち合わせで会った上岡さんから告げられた。作詞者名は「三池嵐次郎」。
ルネサンス期の大芸術家・ミケランジェロをもじったという。「(誰かと聞かれたら)医者から余命20年と宣告された大阪のおっちゃんって言うといて」。
なぜ作詞して自分に託したのかは、「暇やったから」とはぐらかされるばかりだった。






実はもう1曲

 2016年に発売したシングルに収録したが、約束を守り、上岡さんのことは隠してきた。
訃報を受け、「才能にあふれた人だったということを知ってもらってもいいのでは」と思い、初めて経緯を明らかにした。

 実はもう1曲、上岡さんから預かった歌詞がある。父親への思いを込めて作ったと聞かされた。中村さんは「いつか作品にしたい」と考えている。

https://www.yomiuri.co.jp/culture/music/20230629-OYT1T50140/