2023/2/9 14:50

「炎環(えんかん)」「北条政子」など多くの歴史小説や評論を手掛けた作家の永井路子(ながい・みちこ=本名・黒板擴子=くろいた・ひろこ)さんが1月27日、老衰のため死去した。97歳だった。葬儀・告別式は近親者で済ませた。

大正14年、東京生まれ。茨城県古河(こが)市で育つ。東京女子大卒。昭和24年、小学館に入社し、雑誌編集に携わりながら歴史小説の執筆を始めた。36年に退職し、文筆活動に専念。司馬遼太郎や黒岩重吾らの同人誌「近代説話」に参加し、40年には北条義時ら鎌倉幕府の中枢にいた4人の人物を描いた「炎環」で直木賞を受賞した。

その後も日本の中世を主舞台に、女性史にも光を当てた作品を相次ぎ発表。正史や従来の人物像、歴史像にとらわれない独自の歴史解釈は「永井史観」と評された。57年、奈良の都の政争を描いた「氷輪」で女流文学賞。59年、菊池寛賞。63年、最澄と桓武天皇の生涯を小説化した「雲と風と」で吉川英治文学賞。平成21年、評伝「岩倉具視」で毎日芸術賞。

昭和37年から40年近く神奈川県鎌倉市に居住。「炎環」「北条政子」など鎌倉時代を舞台にした作品群は同時代の人気や知名度の向上に寄与し、54年のNHK大河ドラマ「草燃える」の原作にもなった。「山霧 毛利元就の妻」も平成9年の大河ドラマ「毛利元就」の原作に選ばれた。

他の代表作に「銀の館」「歴史をさわがせた女たち」シリーズなど。産経新聞では昭和51~52年、「にっぽん亭主拝見」を連載した。夫は平成27年に死去した歴史学者の黒板伸夫。

https://www.sankei.com/article/20230209-P5KN7JAVHBKPZL6A4TWUYHAZV4/