江口のりこ、俳優は「有名になりたいとかいう動機では続かない」〈週刊朝日〉
8/12(金) 11:00 AERA dot.
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江口のりこ(えぐち・のりこ)/ 1980年生まれ。兵庫県出身。2002年映画デビュー。タナダユキ監督「月とチェリー」で映画初主演。21年、中田秀夫監督「事故物件 恐い間取り」で日本アカデミー賞優秀助演女優賞。長塚圭史演出の出演作に、「浮標」(11年)...
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 やり手の国土交通大臣を演じた2020年版の「半沢直樹」で、その名を知った人も多いだろう。以降、バイプレーヤーとしてだけでなく、主演としても活躍する。俳優・江口のりこさんの素顔は、平常心を保つ達人だった。

(※中略)

 これまで、「自分の名前が世間にもっと知れ渡ったらいい」などと考えたことは皆無だという。

「有名になりたいとかいう動機では続かないですよ、この仕事は。しんどいですから。いつも追われている感じなので、目の前のことをやっていくだけで精いっぱい。今やっている芝居のことしか考えられないです。私も、今はこの作品が目の前にあって、日々稽古をして、問題が見つかったら、それに立ち向かう。そういう作業日がずっと続いている感じで、一日があっという間に終わってしまう。だから、先を見る余裕がないんです」

 毎日、いろんな日があって、「楽しい」「好き」ばかりでは乗り越えられないときもある。でも、江口さんは、「それはしょうがないです。仕事ですから」と変わらず淡々とした口調で言う。

「目の前のことを淡々とやっていくのは、俳優業に限ったことじゃなく、仕事をしている人は、みんなそうなんじゃないですか。自分の選んだ仕事ではあるけれども、全部が楽しいわけじゃない。それは、誰もが同じだと思うんですけどね。目の前のことに必死になって、昨日できなかったことが今日はできたり、明日に持ち越したり。それが私は苦じゃないし、それもひっくるめて楽しいと思えるんです」

 もう一つ、江口さんを舞台にのめり込ませるのが、作品ごとの出合いだ。役との出合いも刺激的だが、そこには常に課題がつきまとう。でも、スタッフや共演者など“人”との出会いは、シンプルに現場を「楽しい」と思わせてくれるのだそう。

「どうせやるならおもしろいほうがいいじゃないですか。何でもね。舞台のおもしろさは、脚本にもあるけど、私にとっては、一緒にやる人が大きいかもしれない。今回のチームにも好きな人がいっぱいいます。『夜の女たち』では、これまでやったことがない役ですが、役柄の変化には、私は、そんなにこだわりはないです。何でもできるとも思ってないし。人にはそれぞれタイプがありますから」

(菊地陽子 構成/長沢明)