目の奥が笑っていないロシア男

 緊迫した状況が続くウクライナですが、私がおよそ10年前、見聞きしたロシアとウクライナの人たちのことをお話ししますね。

 ロシアは最初にモスクワに入りましたが、とにかくロシアの男は笑わない。陰気で愛想がなくて仏頂面。何を考えてるか分からなくて不気味。「人前で笑ってはいけない」という文化があるようなのですが、ほほ笑んでも目の奥が笑ってないんです。プーチンもそうですよね。

 モスクワの赤の広場で写真を撮っていたのですが、昼間からウオッカをあおっている人たちがごろごろいる。そのうち数人の男が喧嘩をし始めて巻き込まれそうになりました。あれは怖かったな。

 当時はホテルにも盗聴器があるといわれていて、セキュリティーも厳しかった。とにかく街も人も、空気が重く、暗いんです。私がいてもジロリと見てくるだけで、声をかけてくる人は皆無。それは地方に行っても変わらなかった。

 一方、ロシアとは打って変わって、ウクライナの人はみなさん、優しくてフレンドリー。私がバックパッカーだと分かると、すぐに話しかけてくる。温かい雰囲気でした。男性もイケメン揃い。ロシアの女性もスラブ系で美しい人が多いんですが、ウクライナの女性もお人形さんのようにキレイな女性が多いです。

 今まで94カ国を旅して、50人以上の男性と夜を共にしてきましたが、残念ながらロシアやウクライナの男性とはないですね(笑)。

キーウのイケメンにナンパされ…

 でも、ウクライナではナンパされました。首都キーウで教会の写真を撮っていたら、突然、背が高い20代のイケメンの男性(タラス=仮名)にグイグイ道の真ん中へ腕をひっぱられました。見ると「モーゼの十戒」のようにすーっと人が引いていき、タラスは興奮して「カメラ! カメラ! ユーアーラッキー!」と私に写真を撮るように促しました。おそらく偉い司祭さんか何かだと思います。

 その後、「マイネーム、タラス、トゥデイ、トゥデイ、トゥギャザー!」と言って、キーウの街を案内してもらうことになりました。

 言葉はほとんど通じません。最初は彼の友達も含め4人でファストフードに行って筆談していたのですが、そのうち彼らも帰ってしまい、タラスとふたりであちこち巡りました。タラスはカッコよくてジェントルマン。束の間のデートは、「ローマの休日」ならぬ「キーウの休日」といった感じで、徐々にいい雰囲気になっていったのですが、私はその夜のバスでモルドバに移動することになっていたのです。

 彼が手を振ってバスを走って送ってくれたのが忘れられません。バスが決まってなかったら、きっと彼と一夜を共にしていたと思います──。

 私は政治的なことは分からないけど、とにかく早く戦争が終結して欲しい。破壊されたキーウの街を見るたびに、タラスは無事かなぁと心配になっています。

▽歩えりこ(あゆみ・りえこ) 旅行家・女優。1981年9月22日生まれ。東京都出身。5大陸世界94カ国を一人旅した「旅ドル」。バスト90センチ(Hカップ)のボディーを武器に、グラビアでも活躍。著書に「ブラを捨て旅に出よう 貧乏乙女の“世界一周”旅行記」(講談社文庫)などがある。

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