映画情報2022.01.28
迫るタンクローリー 逃げられない恐怖
激突!【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

2月2日(水)[BSプレミアム]後1:00
自動車で仕事にでかけたデーブは、前をゆったり走る巨大なタンクローリーを何の気なしに追い抜きます。ところが、そのタンクローリーが執ように追いかけくるのです。死のゲームに巻き込まれてしまったデーブは…。
今回ご紹介するのはアメリカを代表する映画作家、スティーブン・スピルバーグが一躍注目された傑作です。

スピルバーグ監督はことしで76歳。キャリア初のミュージカル映画「ウエスト・サイド・ストーリー」(2021)がまもなく日本公開予定、さらに自身の幼少時代をもとにしたという新作が完成予定と、半世紀以上も第一線で活躍し続けています。
そんなスピルバーグ監督が20代半ばで演出し、若き天才と絶賛されたのがこの作品。もともとはテレビドラマでしたが、完成度の高さから日本やヨーロッパでは映画館で上映されました。身近に起きる恐怖を映像で表現するきびきびした演出は、今もまったく古びていません。
オールロケ、わずか2週間ほどで撮影されたということですが、入念に準備したのは、“どんなタンクローリーにするか”。多くのトレーラーの中からオーディションして選んだとあって、古びているのに強力なパワーを感じさせ、フロント部分が無表情で冷酷な顔のようにみえてくるのですから、スピルバーグ監督のセンスと演出力に脱帽させられます。

原作・脚本はリチャード・マシスン。現在のゾンビ映画のもとになったともいわれる「アイ・アム・レジェンド(地球最後の男)」や時空をこえた恋愛をロマンチックに描く「ある日どこかで」などの小説や、テレビシリーズ「トワイライト・ゾーン」の原作・脚本も手がけたSF/ホラー作家です。マシスンのファンだったスピルバーグ監督は、シンプルで底知れぬ恐怖を描いた短編小説を一読し、映像化を希望したということです。

デーブを演じるデニス・ウィーバーは当時、ドラマ「警部マクロード」のマクロード役として親しまれていましたが、この作品では、ごく普通の中年男性が次第に追い詰められていく心理を見事に表現しています。スピルバーグ監督は、オーソン・ウェルズ監督の傑作「黒い罠」(1958)でウィーバーに注目し、この作品に起用したということです。
そして、強烈な印象のタンクローリーの運転手を、「フレンチ・コネクション」(1971)や「ゲッタウェイ」(1972)など、数々の傑作アクション映画でもカースタントを担当したベテランスタントマン、キャリー・ロフティンが演じています。

2月の水曜午後はほかにも、スピルバーグが監督やプロデュースを務めた名作を放送します。ご期待ください!

プレミアムシネマ「激突!」
2月2日(水)[BSプレミアム]後1:00〜2:30

プレミアムシネマ「グーニーズ」
2月9日(水)[BSプレミアム]後1:00〜2:55

プレミアムシネマ「ツイスター」
2月16日(水)[BSプレミアム]後1:00〜2:54

プレミアムシネマ「A.I.」
2月23日(水)[BSプレミアム]後1:00〜3:27

https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=32970