2021年06月09日18時07分
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毎日新聞に掲載された、人気絵本「はらぺこあおむし」を参照した風刺画が波紋を呼んでいる。

東京五輪の開催に"強行姿勢"を見せる国際オリンピック委員会(IOC)を風刺する意図で制作されたが、同書籍の出版元が「まったく不適当と言わざるを得ません」と憤慨している。

毎日新聞社はJ-CASTニュースの取材に「今回のご指摘を真摯に受け止め、今後の紙面作りに生かしてまいります」と答えた。


■「強い違和感を感じざるを得ません」

風刺画は、毎日新聞の2021年6月5日付朝刊に掲載された。イラストレーター・よこたしぎ(横田詞輝)氏が98年から連載している漫画「経世済民術(けいせいさいみんじゅつ)」の一つだった。

タイトルは「エリック・カールさんを偲んで はらぺこIOC 食べまくる物語」。エリック・カール氏ははらぺこあおむしの作者で、今年5月に死去した。

トーマス・バッハ会長らIOCの幹部を「あおむし」として描き、ジョン・コーツIOC副会長、​ディック・パウンド委員が「放映権」と書かれた「ゴリン(五輪)の実」をむさぼっている。その横では、菅義偉首相がゴリンの実がなる木に水を与え、せっせと育てている。「犠牲が必要?!」との吹き出しもあった。

はらぺこあおむしの版元である偕成社(東京都新宿区)の今村正樹社長は7日、自社サイトで「多くの子どもたちに愛されている絵本『はらぺこあおむし』の出版元として強い違和感を感じざるを得ませんでした」と声明を発表した。

絵本の魅力を「あおむしのどこまでも健康的な食欲と、それに共感する子どもたち自身の『食べたい、成長したい』という欲求にあると思っています」と説明したうえで、前述の風刺画について「金銭的な利権への欲望を風刺するにはまったく不適当と言わざるを得ません」と不快感をあらわにした。

■「日本を代表する新聞の一つとしての猛省を求めたい」

続けて、

「作者は多分ニュースでカールさん逝去の報を知り、『偲ぶ』という言い方をしていますが、おそらく絵本そのものを読んでいないのでしょう。もし読んだうえでこの風刺をあえて描こうとしたのだとしたら、満腹の末に美しい蝶に変身する結末をどのように考えられたのでしょうか」
と疑問を呈し、

「風刺は引用する作品全体の意味を理解したうえでこそ力をもつのだと思います。今回の風刺漫画は作者と紙面に載せた編集者双方の不勉強、センスの無さを露呈したものでした。繰り返しますが、出版に携わるものとして、表現の自由、風刺画の重要さを信じるがゆえにこうしたお粗末さを本当に残念に思います。日本を代表する新聞の一つとしての猛省を求めたいと思います」
と趣旨への不賛同を強く主張した。

毎日新聞社長室広報担当は9日、J-CASTニュースの取材に「掲載した風刺漫画は肥大化するIOCに対する皮肉を表現した作品です。今回のご指摘を真摯に受け止め、今後の紙面作りに生かしてまいります」と答えた。