「広島1−0阪神」(30日、マツダスタジアム)

 長いプロ野球人生、こんな日もある−。阪神は完封負けを喫し、今季初黒星。首位から陥落した。ドラフト1位・佐藤輝明内野手(22)=近大=は2試合ぶりの安打を放つも、公式戦で初の3三振を喫し、プロ入り初めて最後の打者になる屈辱。バットを叩き付けて悔しがったその熱い気持ちを、第2戦にぶつけてくれ!!

 真っ赤なスタンドが揺れる中、佐藤輝は悔しさを隠さなかった。1点を追う九回、守護神・栗林にフルスイングで襲いかかったが、外角に沈むフォークに空振り三振。プロ入り初めてゲームセットの瞬間を打席で迎え、ベンチのラバーにバットを叩き付けた。

 先発・森下に“プロの洗礼”を浴びた。初対戦となった二回1死一塁は、カウント2−2からカーブに空振り三振。四回1死満塁と絶好の先制機では、152キロにバットが空を切った。2月21日の練習試合(宜野座)では右中間を破る二塁打を放ったが、本番での再現はならなかった。

 それでも1点を追う七回に闘魂を見せた。1死から同じルーキーの左腕・森浦のスライダーを捉え、ライナーで一、二塁間を突破。右翼線に転がるのを見ると、果敢に二塁ベースを目指した。右翼・鈴木誠が滑り込んで打球を止め、二塁に好送球。佐藤輝のヘッドスライディングも及ばず、間一髪アウトとなったが、ダイナミックな2人のプレーにスタンドは大きな拍手に包まれた。

 矢野監督も「全然行っていいと思う。あれは相手が上なだけで。うちの野球はそういう野球」と怪物新人を責めることはなかった。この夜は公式戦で初の3三振。井上ヘッドコーチは「確かにいいピッチャーが来た時はそうは打てないと感じていると思う」と冷静に分析しつつ、「あれだけのものを見せてきた。打席に立たせて、覚えてきて、また復活したものを見せられるように」と背中を押す。

 チームは昨季4戦3敗と天敵・森下の前に沈黙。指揮官は「どのカウントでもいろんな球種でカウントを取れたり、空振りもいろんな球種で取れるっていうのは、レベルの高いピッチャー」と脱帽したが、優勝を目指すために打倒・森下は避けては通れない道だ。

 巨人が中日と引き分けたため、首位から陥落。それでも矢野監督は「そんな大きくダメージというのはない。攻めていく気持ち、粘りとか、そういうところはやりきってくれた」と前を向く。

 佐藤輝は取材対応のメンバーから外れ、コメントを残すことはなかった。この日の悔しさは次戦で晴らせばいい。長いペナントレース、リベンジの機会は必ずある。

デイリー

https://news.yahoo.co.jp/articles/4ba8ac58a542e6dd76d84500277784de155668bc