最終節まで残り1カ月余りを残しているJリーグだが、間違いなく言えることが「2020年は川崎フロンターレのシーズンだった」ということである。

 全34試合中27試合を消化した時点で、22勝3分け2敗の勝点69。リーグ最多の71得点にリーグ最少の23失点で、得失点差プラス48。2位に勝点差14をつける独走状態で、2年ぶり3度目のリーグ制覇を目前にしている。

 J1史上最速優勝、年間最多勝点(18クラブによる34試合制となった2005年以降として)の更新の可能性も高く、2002年のジュビロ磐田に匹敵、あるいはそれを上回る「Jリーグ史上最強」のチームとの呼び声も高い。そして、この強さは今年に限ったことではなく、2017年のJ1初優勝から2018年のリーグ連覇という流れがあり、昨季は4位に甘んじたとはいえ、今季の圧倒的な強さを見る限り、「黄金期」と言っていいだろう。そうなると、次なる興味は、この黄金期が「いつまで続くのか」である。

 現チームのメンバー構成を見ると、外国人選手を除いた今季のリーグ戦出場のフィールドプレイヤー18人の平均年齢は27.8歳。Jリーグの中では高齢の部類になるが、ここから今季限りで引退する40歳の中村憲剛を省くと27.1歳と若くなる。さらに選手個々を見ると、今季新加入で大ブレイクを果たした三笘薫が23歳で、同じく大卒1年目の旗手怜央が22歳。背番号10を背負う天才MF大島僚太が27歳で、これからが働き盛り。

 中盤の脇坂泰斗と守田英正はともに25歳で、田中碧に至ってはまだ22歳だ。DF陣も、登里享平が30歳、谷口彰悟が29歳、車屋紳太郎が28歳、山根視来が26歳と、まだ数年は衰えの心配はない。今季、コロナ禍での5人交代制を最大限に利用しながら若手陣が多くの経験を積めたことは、来季以降の戦いに向けても明るい材料であり、チームとしてもまだまだ成長できる余地を残していると言える。

 だが、懸念材料はある。一つ目は、先ほども触れたが、クラブのレジェンドである中村憲剛が今季限りで現役から退くこと。川崎ひと筋18年、ピッチ内外で常に多くの者から愛されてきた男がユニフォームを脱ぐことで、チームの雰囲気、チーム内における各選手の立場は間違いなく変わる。クラブとしての大きな転換期を迎えることは間違いない。ただ、単純に戦力的な面を考えると、中盤には大島、脇坂、守田、田中と優秀な面子が揃う。中村が左膝手術からのリハビリで今季はほぼ不在だったことを考えると、中村引退の影響は最小限に抑えられるはずだ。あとは精神的な部分。「川崎イズム」を受け継ぐ、次の“ミスターフロンターレ”を早く決めたい。

 もう一つのポイントが、家長昭博である。一昨年のリーグMVPは、今季も円熟味を増したプレーで攻撃に極上のアクセントを加えてチームを牽引した。そのパフォーマンスは日本代表に選ばれないのが不思議なほどで、欧州5大リーグでも間違いなく“違い”を作れるレベルだろう。だが、その家長も34歳。現時点で肉体的な衰えは見えないが、年齢による衰えは誰にでも必ず訪れる。

 小林悠が33歳となったセンターFWに関しては、後継者として20歳の宮代大聖がおり、レアンドロ・ダミアンのような外国人選手で埋めることも比較的容易だろうが、家長の代役および後継者となると探すのが非常に困難になる。早い段階で家長からポジションを奪い取る選手が頭角を現す、あるいは新たに獲得することが黄金期継続のためには必要になるだろう。

 栄枯盛衰、盛者必衰は世の常だが、世界を見渡せば、ユベントスやバイエルン・ミュンヘン、レアル・マドリードやバルセロナのように、いつの時代も勝ち続けるクラブはある。彼らは伝統を守りながらも、常に積極的な戦力補強で血の入れ替えを行っている。川崎に関して言えば、まずは若手の海外流出を極力、防ぐこと。資金力では浦和レッズやヴィッセル神戸に劣るだけに、今後もアカデミーで優秀な人材を育てることが重要で、近年の補強の軸になっている大学サッカー界に対しても引き続きスカウトが鋭い目を光らせたい。

 まずは中村憲剛が去った来季が一つ目の山、そして家長昭博に衰えが見えた時が二つ目の山。そこを乗り越えることができれば、5年後、10年後も優勝争いを続けることができる。鬼木達監督のマネジメント力に注視し、期待しながら、川崎フロンターレの今後の“進化”を見届けたい。

https://news.yahoo.co.jp/articles/9f64ce9ff31b50e752994b6a8f8e79f6a72252b3
https://amd-pctr.c.yimg.jp/r/iwiz-amd/20201118-00000005-sasahi-000-1-view.jpg